2011 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物超伝導体における「2ギャップ問題」の変分法およびBdG方程式を用いた研究
Project/Area Number |
22540359
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 寿敏 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60212304)
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Keywords | 超伝導 / 銅酸化物 / 擬ギャップ / 変分法 / 不均一性 |
Research Abstract |
最近見出された鉄ヒ素系物質とは違い、銅酸化物の超伝導には強相関性(モット物理)が本質的である。その機構を解明するためには、まず低ドープ領域に現れる擬ギャップの成因を理解する必要がある。その手掛かりとして、最近行われたARPESなどの実験[波数空間の(π,0)点近傍で非常に大きなギャップが出現し超伝導ギャップとは無関係(2ギャップ問題)]とSTS/STMの実験[CuO_2面は不均一でギャップの大きさが異なる微視的領域がモザイク状に乱雑に分布]という、それぞれ波数空間と実空間での結果を整合性をもって説明する微視的理論が必要である。本研究では強相関不均一系の電子状態を両空間に渡って調べるため、拡張グッツヴィラー近似によって多体問題を一体化し、ボゴリューボフードゥジャン(BdG)方程式を適用して、様々な乱れが両空間にどのような電子状態を実現するかを系統的に調べる。この方法で不足する局所相関の精確な扱いを変分モンテカルロ(VMC)法により導入して計算の信頼度を上げ、擬ギャップと系の不均一性との関係を明らかにする。本年度は実空間の擬ギャップの不均一性に疑問を呈する実験が現れたため、計画を多少変更して、まず均一系肱張された斥力および引力ハバード(t-t'-U)の模型]において擬ギャップを議論するBCS-BECクロスオーバーの計算を最適化VMC法を用いて実施した。その結果(i)クロスオーバーの成立がほぼ確立している引力モデルでの結果(対生成ギャップ、凝縮エネルギー、超伝導相関関数)は、銅酸化物(斥力モデル)にはそのまま通用しないことが解った。そこで当初の計画に戻り、(ii)均一モデルにおいて、ドープされたホールの挙動やペア相関関数(超伝導強度)の各パラメーター依存性を調べた。昨年度及び(i)で得た知見を元に、次年度はBdG方程式の計算を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近の銅酸化物に対するSTSの実験で、擬ギャップの実空間での局所的揺らぎはないことを示唆する研究が現れた。これは本研究の一つの柱である不均一性に疑問を呈する結果であり、まず均一モデルの範囲内で擬ギャップが説明できるか(例えばBCS-BECクロスオーバーの理論など)を検証する計算を優先させて行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き均一モデルに対する変分計算も平行して行うが、実験結果の如何に関わらず不均一性のもたらす効果の研究は重要であるため、当初の計画通り、不均一モデルに対するBdG方程式の計算を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)