2011 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物高温超伝導体で新たに発見した80K超伝導相についての物性研究
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22540362
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉崎 亮造 筑波大学, 数理物質系, 名誉教授 (70011137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 和男 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00272170)
池田 博 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50272167)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導 / Bi-2201相 / Ca-ドーピング / CuO_2面1層系 / 頂点酸素 |
Research Abstract |
CaをドープしたBi-2201相の超伝導体Bi_<2+x>、Sr_<2-x-y>,Ca_yCuO_<6+δ>の単結晶試料作製を行った。Caのドープ量yおよび過剰Bi量xを変え、溶融帯移動赤外炉を使用して単結晶作製に成功した。組成(x、y)=(0.1,0.6)および(0.15,0A)の単結晶試料についてX線回折によりBi-2201相であることを確認したその試料について超伝導磁化測定および電気抵抗測定を行った。これらの試料はそれぞれにバルク超伝導を示し、超伝導転移温度は零抵抗温度で86.5Kおよび76.1Kであった。これらの超伝導温度はLaをドープしたBi-2201相単結晶の零抵抗転移温度、38Kより2倍以上高い。また、CaをドープしたBi-2201相の焼結体試料におけるPopovic達の先行研究結果、零抵抗温度50Kよりはるかに高い値である。 CaをドープしたBi-2201相結晶の超伝導転移温度が高い理由について考察した。一つは、Laドープでは3価のイオンが2価のSrイオンと置換しており、電荷の不斉が生じている。これに比べCaはSrと同じ2価であり、電荷不斉ははるかに少ないと考えられる。またBi-2201相自身の超伝導転移温度が14Kと低いのは過剰Biの量が15%を超えており、このBiイオンが3価としてSrイオンサイトに入るためであると考えられる。 もう一つの理由はペロヴスカイト1層系の酸素8面体の頂点酸素のCuO_2面からの距離d_Aが他のBi系に比べ長いためであると考えられる。実際榊原達の理論計算の結果と良い一致を示している。 ペロヴスカイト1層系は銅酸化物超伝導体の基本であると考えられている。この系についてこれまでのいろいろ超伝導体の実験結果をまとめると超伝導転移温度はd_Aにほぼ比例していることを示すことができた。これらの結果は銅酸化物高温超電導体の発現機構の解明に迫るものであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶試料についてX線回折、磁化測定、抵抗測定を行うことができた。単結晶構造解析に耐えうる良質な試料作製に成功したが、測定装置が東日本大震災の影響を受け、単結晶構造解析は行われていない。
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶X線回折ばかりでなく、角度変化光電子分光や走査トンネル分光などに耐えうる上質な試料作製を行い、これらの測定を行う。また、Bi-2201相で初めての固有ジョセフソン結合を利用したテラヘルツ波の発振を行う。
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Research Products
(4 results)