2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540364
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
藤原 明比古 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主席研究員 (70272458)
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Keywords | 有機半導体 / 分子性固体 |
Research Abstract |
本研究では、ピセンのドーピング効果と電子物性の相関を調べることを目的としている。初年度(平成22年度)には、疎水性基板を用いたピセンFETでヒステリシスの少ないデバイスの作製に成功するとともに、フェナセン系のFETにおいてベンゼン環5個のピセンが酸素敏感なのに対して、[7]フェナセンが空気中で安定なことを明らかにした。平成23年度は、より大きな電子物性の制御のために、活性層に単結晶ピセンを用いたデバイスやゲート絶縁層としてイオン液体をもちいたデバイスの作製を行った。その結果、以下の成果を達成した。 1.単結晶ピセンFETを作製し、高易動度デバイスの作製に成功した。これまで、単結晶ピセンFETは、電極からのキャリア注入障壁が高かったためである。今回、金電極とピセン単結晶の間にテトラシアノキノジメタン(TCNQ)を挿入することで、キャリア注入障壁の低減に成功した。 2.電子物性のより大きな変調のためには、より効率的な制御が必要である。ゲート絶縁膜を固体誘電体からイオン液体にすることで、低電圧で高キャリア層の実現が可能である。今回、[7]フェナセン薄膜、ピセン単結晶を活性層とし、ゲート絶縁層として1-ブチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム・ヘキサフルオロホスファート(bmim[PF_6])を用いた定電圧駆動FETの作製に成功した。 単結晶試料によるFET作製とイオン液体による定電圧での物性制御は、今後の高キャリア状態実現とその精密物性測定において非常に意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学的な手法である金属ドープ、物理的手法であるいわゆる電界効果ドープ、さらには、その双方の可能性を秘めたイオン液体を用いた電界効果による物性変調に成功しており、様々なドーピング方法による研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題が開始した平成22年から、ピセンの高易動度の電界効果トランジスタ特性、アルカリ金属ドープした試料での超伝導発現など新規な物性が報告されてきた。その結果、関連材料での研究が集中的に行われ、最近になって、関連物質で新しい超伝導体の発見も報告されている。この芳香族系半導体のドーピング効果を明らかにするためには、様々な金属ドープ試料の構造と物性を明らかにする必要が出てきた。申請者は、現在、大型放射光施設での構造物性研究を行うグループを組織しているため、現在課題となっている構造と物性の相関関係を明らかにする。ピセン関連芳香族のアルカリ金属化合物を対象とした放射光X線回折実験により、精密構造解析を行う。
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Research Products
(4 results)