2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子性導体の2量体性・フラストレーション制御による超伝導転移機構の解明
Project/Area Number |
22540365
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 裕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10260374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大成 誠一郎 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教 (80402535)
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Keywords | 有機超伝導体 / 2量体化 / β型分子配列 / スピン揺らぎ / 三角格子 / フラストレーション / 一軸性圧縮 |
Research Abstract |
エポキシ樹脂に埋め込むことにより得られたβ-(BEDT-TTF)_2I_3の高Tc相における一軸性圧縮効果について、BDA-TTP塩を含めた3物質問で理論的な解析を進めた。2量体化した1/2フィルドモデルと、2量体を仮定しない2バンドの1/4フィルドモデルの両方で、Tcの一軸圧依存性を計算した。β-(BEDT-TTF)_2I_3については、2量体モデルを用いたとき、スタック方向、スタック垂直方向の2方向とも、低圧領域でTcが上昇する実験結果を支持する計算結果が得られた。一方、BDA-TTP塩では、X=SbF_6については両モデルとも低圧領域での実験結果を再現したが、X=AsF_6については、2量体化を仮定しないモデルのほうが、実験結果との一致がよいことがわかった。すなわち、2量体化の程度の強いβ-(BEDT-TTF)_2I_3では、2量体モデルのほうが実験との一致がよく、2量体化の程度の弱いβ-(BDA-TTP)_2AsF_6では、2量体を解いた2バンドの1/4フィルドモデルのほうが実験を再現し、2量体化の程度の違いに対応していることがわかった。さらに、β-(BEDT-TTF)_2I_3について、実験状況に適した低温高圧下の構造データを用い、さらにオフサイトクーロン相互作用を入れた拡張ハバード計算を行うと、実験結果との一致度が向上することを見出した。 またβ-(BEDT-TTF)_2I_3の高Tc相が常圧で出現しているβ-(BEDT-TTF)_2IBr_2について、一軸性圧縮効果の実験を行い、その圧縮方向依存性がβ-(BEDT-TTF)_2I_3の傾向と概ね一致していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目には、β-(BEDT-TTF)_2I_3の一軸性圧縮効果の実験に成功し、当年度には、以前のBDA-TTP塩の場合と合わせて、2量体化の強弱に応じた理論モデルによって統一的に解釈できることを見出すことができた。さらにβ-(BEDT-TTF)_2IBr_2における一軸性圧縮実験を行うことに成功し、β-(BEDT-TTF)_2I_3と同様に理解できる見通しを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
β-(BEDT-TTF)_2AuI_2についても研究を進め、2量体性の程度の違いをパラメータとしたβ型有機超伝導体の超伝導転移の系統的理解を進める。さらにκ型BEDT-TTF塩についてもより詳細な研究を行い、β型分子配列とκ型分子配列における2量体性の違いと超伝導転移との関係について調べ、κ塩における高いTcの起源について解明を進める。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] β型有機超伝導体の-軸性圧縮効果-圧縮方向依存性-2011
Author(s)
伊東裕, 丹羽政文, 田中久暁, 黒田新一, 本杉友佳里, 鈴木丈夫, 大成誠一郎, 田仲由喜夫, 平松孝章, 矢持秀起, 齋藤軍治
Organizer
日本物理学会2011年秋季大会
Place of Presentation
富山大学(富山県)
Year and Date
2011-09-21