2011 Fiscal Year Annual Research Report
強相関化合物におけるf電子の遍歴および局在の二重性の解明
Project/Area Number |
22540370
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞榮平 孝裕 琉球大学, 理学部, 准教授 (20372807)
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Keywords | 相対論的バンド計算 / f電子系 / 電子相関 / 磁性 / j-j結合 / 希土類化合物 / アクチニド化合物 / 遍歴・局在 |
Research Abstract |
遍歴と局在の2重性は強相関電子系の持つ本質的な問題である。本研究では、2重性を本質的に内在する単体セリウムを研究対象に選び、2重性の起源を明らかにするとともに、典型的なセリウム化合物における2重性が関与する物性現象を明らかにすることを目的とする。相対論的バンド理論をにに微視的模型を構築し、f電子の局在性と遍歴性の拮抗に起因した特異な現象の統一的描像への到達を目指す。 昨年度に引き続き単体Ceに対するバンド計算を実行し、相変化に伴う4f電子の局在性と遍歴性について解析を進めた。また、4f電子と5f電子の違いによる理解のためアクチノイド化合物群に対するバンド計算を実行し、5f電子の局在性と遍歴性についても解析を進めた。特に、これまであまり理論解析が行われてこなかった、超ウラン系化合物の電子構造を明らかにした。 (1)α-Ceのバンド計算の実行と解析 α-Ceおよびγ-Ceの結晶場基底状態を再現するように結晶場ポテンシャルのパラメーター範囲を探索し、j-j結合描像での1電子ポテンシャルを見積もった。4f電子のいないThも含めて、電子構造やフェルミ面の系統的比較を行った。 (2)AnSn3(An=Th、U、Np、Pu)のバンド計算の実行と解析 アクチノイド系列において、トリウムから超ウラン系のプルトニウムまでのCuAu3構造をもつ化合物、ThSn3、USn3、NpSn3、PuSn3に対するバンド計算を実行し、電子構造を明らかにした。 (3)PuX2(X=Ru、Rh、Ir、Pt)のバンド計算の実行と解析 プルトニウムを含むラーベス相構造をもつ化合物、PuRu2、PuRh2、PuIr2、PuPt2に対するバンド計算を実行し、電子構造を明らかにした。 (4)PuX(X=S、Se、Te)のバンド計算の実行と解析 プルトニウムを含むモノカルコゲナイド構造をもつ化合物、PuS、PuSe、PuTeに対するバンド計算を実行し、電子構造を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、今回解析に選択した超ウラン系化合物群の相対論的バンド計算において、精度良くエネルギー固有値を決定するのが難しいのではないかと予想しましたが、実際に計算を進めた結果、そのような困難さは無く、精度良く安定して電子状態を決定することができました。そのことが、今回、研究が順調に進んだ大きな要因だと考えます。
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Strategy for Future Research Activity |
fcc構造とdhcp構造をもつ単体Laについてバンド計算を実行し、単体Ceに対する相変化に伴う4f電子の局在性と遍歴性について解析を進める。また、アクチノイド化合物群に対するバンド計算も実行し、5f電子の局在性と遍歴性についても解析を進め、4f電子と5f電子の違いによる理解を目指す。さらに、新規に発見された強相関電子系化合物EuGa4の電子構造を明らかにする。 最終目標としては、f電子の局在性と遍歴性の拮抗に起因した特異な現象の統一的描像への到達を目指す。
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