2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体の電子密度揺らぎを考慮した強相関電子系の電子構造の理論的研究
Project/Area Number |
22540374
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
山上 浩志 京都産業大学, 理学部, 教授 (20239867)
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Keywords | 強相関電子系 / バンド理論 |
Research Abstract |
強相関f電子系化合物のバルクのバンド構造が軟X線角度分解光電子分光の高度化により明瞭に観測できるようになり、ブリルアン・ゾーン内のフェルミ面の位置や形状について密度汎関数法の相対論的バンド理論で説明できることがわかってきた。本研究では、強相関f電子系バンド理論の新たな展開として、局所密度近似を超えた固体の電子密度とその揺らぎを考慮した電子相関の計算理論の構築し、相対論的バンド理論と融合させた電子構造の理論的研究を行うことを目的にしている。 上述した目的を達成するために、Singwi,Tosi,LandとSjolanderが提案したSTLS理論を応用し、バンド構造から計算された電子密度分布での電子相関の計算を実行する。電子ガス系でのSTLS理論の計算プログラムをFortran2003言語でのプログラム作成し、相関エネルギーの計算を行った。近似解として、十分な精度をもつことを確認した。 得られた結果を基にして、電子ガス系でのSTLS理論を結晶の全対称関数を用いたバンド理論に拡張し、電子構造を自己無撞着な計算で求める相対論的バンド理論の定式化を行った。実際のディラックの相対論的LAPW法によるバンド計算を実行するためにはフルポテンシャルによる拡張が必要である。今年度において、結晶の全対称化関数の生成および相対論的バンド理論のためのフルポテンシャルのプログラムモジュールを作成した。 それと平行して、価数転移をするYb系化合物の軟X線角度分解光電子分光法が観測されたので、電子構造計算を密度汎関数法の範囲内で計算を実行した。価数が2価のYb化合物であるYbCu2Ge2では密度汎関数を基にした相対論的電子構造で説明可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディラック方程式を基にした相対論的LAPW法の定式化を行い、実際の計算で重要な結晶全対称化関数の生成、そのプルポテンシャル計算およびSTLS理論のプログラムモジュールの作成が完了している。さらに、既存のプログラムとのインターフェースプログラムの作成を行えば、計算が可能な状況まで至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的であるSTLS理論と相対論的バンド理論の融合という点では開発に時間がかかっているが、計画どおり行えば研究期間内で完成できるもの考えている。しかしながら、本研究の成果を実証するには現状知られているGGAなどの他の理論計算も実行する必要がある。現状ではディラック方程式を基にした相対論的LAPW法のフルポテンシャル計算およびGGAなどの計算が存在しないので、その部分についても検証する必要がある。
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Research Products
(2 results)