2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体の電子密度揺らぎを考慮した強相関電子系の電子構造の理論的研究
Project/Area Number |
22540374
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
山上 浩志 京都産業大学, 理学部, 教授 (20239867)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 計算物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は Singwi, Tosi, Land と Sjolander が提案したSTLS理論を応用し、バンド理論から計算される固体の電子密度分布における電子相関効果とf電子系化合物の電子構造を計算するためのバンドプログラムの開発を行うことである。STLS理論は一様な電子ガス系の相関エネルギーにおいて量子モンテカルロの計算結果と一致した結果を与え、固体の電子密度での電子相関の計算への拡張が可能である。 本年度において、f電子系化合物への適用を主眼に置き、ディラック(Dirac-type)の相対論的方程式を基にした線形化補強された平面波(DLAPW)法をフルポテンシャルの方法に拡張し、そのバンドプログラムの開発を完了させた。このFDLAPW法をさまざまなタイプの一般化密度勾配近似の交換相関ポテンシャルで計算できるように拡張した。群論による対称化も含めてプログラムは現在時点で最新のフォートラン2003言語を用いたモジュールベースで作成した。モジュールによるプログラムのハッケージ化により、OpenMPによるk点並列化による高速化やさまざまな理論開発を容易に行うことが可能になった。さまざまな単体や化合物の電子構造計算を実行し、高速で安定した結果が得られていることを確認した。 電子ガス系でのSTLS理論のプログラム開発もモジュールベースで初年度に完成しているので、本年度で最終的な研究計画の達成のための基本的な部分の開発が完成したことになる。 それと平行して、軟X線角度分解光電子分光法による新しい測定結果が得られたので、密度汎関数法理論の範囲内で、価数揺動系 YbRu2Si2の電子構造計算と局在系ウラン化合物UPd3の電子構造とフェルミ面の解析も行った。この研究成果は論文等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディラックの相対論的方的式を基にした相対論的線形化補強された平面波(DLAPW)法をフルポテンシャルの方法に拡張し、最新のフォートラン2003言語によるモジュールベースの新しいバンドプログラムの開発に成功している。電子ガス系での開発済みのSTLS理論とバンド理論との融合を行うことにより、当初の研究計画が達成できるところまで開発が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく開発したフルポテンシャルのFDLAPW法から求めたバンドの電子密度を用いて、STLS近似での電子密度揺らぎを考慮した強相関電子系の電子構造プログラムの開発を完了させる。いくつかの典型的なf電子系化合物の電子構造計算を実行し、電子構造、フェルミ面、電子密度係数などにおいて従来の密度汎関数理論による計算結果と比較を行う。
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