2011 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系の量子シミュレーションによる高温超伝導機構の研究
Project/Area Number |
22540381
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柳澤 孝 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (90344217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷 泉 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (00357774)
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Keywords | 強相関電子系 / 計算物理 |
Research Abstract |
電子間相互作用による高温超伝導機構を研究するために、ハバードモデル等の二次元の多体電子モデルを考察し、その基底状態を数値計算の手法を用いて研究した。今年度は主として以下の研究を行った。 (1)二次元ハバードモデルに対する新しいアルゴリズムに基づく量子モンテカルロ法のプログラムを作成し並列化を行った。これにより超伝導などの相関関数の計算効率を飛躍的に向上させた。 (2)超伝導凝縮エネルギーの物質パラメーター依存性を明らかにするための量子変分モンテカルロ計算を行った。 La系、YBCO系、Hg系の銅酸化物高温超伝導体に対応する物質パラメーターに対して、モンテカルロ法により超伝導凝縮エネルギーを計算し、臨界温度Tcとのコンシステンシーを調べた。クーロン相互作用を大きくするとUc~8tから急激に超伝導凝縮エネルギーが増大する。銅酸素八面体における頂点の酸素と銅原子との距離が遠いほど遮蔽効果の減少により銅原子のクーロン相互作用は大きくなると考えられる。YBCO系、Hg系が高いTcを示すのは頂点酸素の効果によりクーロン相互作用Uが増大するためであると考えられる。これらのパラメータに対し、系のサイズを大きくしても超伝導凝縮エネルギーが有限に残ることを示した。 (3)量子モンテカルロ法により、二次元ハバードモデルに対して超伝導対の相関関数の計算を行った。量子モンテカルロ法の標準的サンプリング法であるメトロポリス法と、新しくプログラムを組んだ対角化法の二つの手法で計算し比較を行った。小さな系では二つの手法からコンシステントな結果が得られ、これらは厳密対角化の結果ともよく一致する。しかしながら、系のサイズが大きくなると共にメトロポリス法は対相関関数を過小評価することがわかった。密度行列くりこみ群法により対相関が増大するとされているラダーモデルでも同様の結果が得られることがわかった。モンテカルロ対角化法によりより大きな系において対相関関数を計算した。 (4)鉄系超伝導体(Ba,K)Fe2As2と同じ結晶構造をもつLaFe2Si2およびLaFe2Ge2に対して、これら物質の超伝導の可能性を調べるために第一原理計算を行った。その結果、LaFe2Si2等はバンド構造がより三次元的であり、知られている鉄ヒ素系超伝導体よりも高い臨界温度Tcは期待できないことがわかった。また、類似物質であるLaPt2Si2の状態密度とバンド構造を計算し、状態密度を鉄原子の作る四面体のゆがみの関数として表わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子モンテカルロ法の新しいアルゴリズムに基づくプログラムを作成し、並列化に成功した。並列計算機により相関関数などを計算し、結果を出す段階に入った。二つの手法による量子モンテカルロ法のプログラムをコーディングして、結果の比較ができるようになった。これにより、過去になされた量子モンテカルロ法の結果とも詳細な比較ができるようになった。時間をかけて計算すれば、相関のある電子系の電子状態が明らかにできると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
量子モンテカルロ法により二次元ハバードモデルの相関関数を計算する。D-pモデルへの拡張も必要であると考えている。超伝導対相関、スピン相関、電荷相関以外にもホロンーダブロン相関等の振る舞いも調べる必要がある。また、変分モンテカルロ法においては、より強相関の領域も含めてパラメータ依存性を調べる。
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