2012 Fiscal Year Annual Research Report
流れと振動による粒状体界面の変形とメソスコピック物理の構築
Project/Area Number |
22540384
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐野 理 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80126292)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 粒状体 / 密度波 / 固液相転移 / 界面変形 / 空洞崩壊 / 浸食 / 渦輪衝突 / メソスコピック |
Research Abstract |
当該年度に得られた研究成果を列挙する.1.粒状体を容器に入れて鉛直加振したときに表面に形成されるさざ波の形成機構を解明した.粒層底面での衝突はその内部粒子の多重衝突を引き起こし,これが密度波として伝播する.その速度に深さ依存性があると地震波の走時曲線と類似した波の屈折が生じる.この速度分布の精密測定により粒状体界面の周期的変形を説明することに成功し,従来の理論的矛盾を解決した.さらに波長選択に関わる要素を明らかにするために1次元の多重衝突シミュレーションを行い,実験で得られた分散関係を半定量的に説明した.これらの成果は国際学会で公表され,論文として投稿中である.2.粒状体の薄層を振動させた時に発生する撓み波に関しては,波の発生を決める周波数や振幅,波形,粒子物性などの臨界条件の定量測定を可能とする装置に改良し,より信頼性の高いモデルの構築を進めている.3.流体がリング状の曲線に沿って自転運動をしている渦領域は渦輪と呼ばれるが,この渦輪は質量,運動量,エネルギーを携えて移動するので,粒状体界面に衝突させると後者を浸食し特徴的な衝突痕を形成する.この過程での渦輪の変形と界面浸食の関係を精密に観測し,衝突痕形成機構の一端を解明した.この成果は国際学会の発表でポスター賞も得ている.これらは浅海底のヘドロ除去や生物環境活性化,火星古環境の推測にも応用が期待されている.4.粒状体内部に流体を流したときの粒子分布の局所変動と流れの集束は,土砂崩れの発生や長距離にわたる水脈の形成,などの課題に関連して着目される固液相互作用や相転移現象の一例である,当該年度はこれまでの知見を踏まえ,3次元的な粒子配置変化を測定し,2次元との違いを比較した.5.粒状体境界面付近の粒子が流れによって運ばれ,界面が変形する特徴的なパターンについて,その発生の臨界条件を精密に測定した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げた1のさざ波の形成機構の解明は当初の計画以上に進展し,懸案だった実験と理論の矛盾はほぼ解決したと思われる.また,2の粒層の撓み波の発生についても概ね順調に研究が進み,あとは,どこまでメソスコピック物理の一般論として展開できるかが課題である.3の渦輪の粒状体表面への衝突に関しても顕著な進展が見られ,国際学会でのポスター賞を得ることができた.しかし,衝突過程を決定する要素がまだ多く残されており,研究は継続中である.4の流れが引き起こす粒状体中の構造変化とそのメカニズムについては実験装置と観測方法が確立され,3次元効果を定量的に評価できる段階に達した.5の砂漣形成については,その発生条件を決める多くの要素の中で支配的な物理量を特定するに至っている.
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように,小テーマ1,2ではさらに詳細なデータを集積して,振動により引き起こされるミクロな物性とマクロな流動の一般論を構築していく.また小テーマ3~5では流れにより駆動される界面変形の実験を進め,流れの構造変化に起因するものと,粒状体の物性に起因するものを区別してデータを集積し,それから固体相を支配する物理と流体相を支配する物理のせめぎ合いと,その遷移過程を明らかにする計画である.後者もメソスコピックな物理過程を理解するための基礎的な知見であると予想され,振動粒層の固液相転移過程と合わせ,本研究課題の核心をなすものである.これまでの研究計画に則った方法で推進する.
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