2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540390
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
樋口 克彦 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 准教授 (20325145)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 雅彦 信州大学, 理学部, 教授 (10292202)
|
Keywords | 対密度 / 対密度汎関数理論 / 電子相関 / 運動エネルギー汎関数 / ヴィリアル定理 / 均一スケーリング / 不均一スケーリング |
Research Abstract |
対密度(二次簡約化密度行列の対角成分)は、静的な電子相関の情報を全て含んでいます。例えば、対密度から対相関関数、静的構造因子、交換相関エネルギーなどが計算できます。本研究課題では対密度の再現を目指し、対密度を基本変数に選んだ「対密度汎関数理論」の開発を進めています。対密度汎関数理論の開発において課題となるのは(i)対密度の探索範囲の設定方法、(ii)運動エネルギー汎関数の近似形の開発です。以下に、(i)および(ii)に対する今年度の成果を述べます。 (i)に対する成果: 電子座標の均一スケーリングを利用し、対密度の探索範囲の拡大方法を提案しました。本手法によって得られる対密度は、N表示可能(反対称波動関数から計算される対密度である)でかつ厳密にヴィリアル定理を満たすという特長を持っています。本手法の有効性を確認するためにNe原子に対してテスト計算上を行いました。その結果、対密度から直接計算できる電子間相互作用エネルギーやポテンシャルエネルギーの誤差が大幅に低減できることが確認されました。このように、本手法により対密度の探索範囲が効率よく拡木されることがわかりました。 (ii)に対する成果: 厳密な関係式を制限条件として用いることで運動エネルギー汎関数の新しい近似形を開発しました。テスト計算の結果、従来の近似形よりも運動エネルギー、電子間相互作用エネルギーやポテンシャルエネルギーの誤差が低減されることが確認されました。また、電子座標の不均一スケーリングを用いて、運動エネルギー汎関数に対する新しい制限条件を求めました。得られた制限条件は、新しい近似形を構築する際に用いることができるだけでなく、従来の近似形の評価にも利用できます。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、検討を始める予定であった「対密度の探索範囲の新しい設定方法」について、「10.実績の概要」で述べた新しい手法を提案し、さらにその有用性の実証まで行うことができました。これは実質的に重要な進展で、今年度はもう一つの課題である運動エネルギー汎関数の改良に集中することが可能となりました。
|
Strategy for Future Research Activity |
対密度汎関数理論における二つの問題点「対密度の探索範囲の設定方法」および「運動エネルギー汎関数の近似形の開発」については、上述のように当初の計画以上に進展しています。そのカギとなっているのは、本研究課題がスタートしてから発見した新しい探索方法や、運動エネルギー汎関数の厳密な関係式の新たな発見です。これらはかなり有望ではありますが、さらに良い探索方法や近似形が眠っている可能性も大いに考えられます。 今後は、対密度汎関数理論の構築のために我々が採ってきた方策、すなわち上記二つの問題点の克服という方策をさらに進めてまいります。さらに、当初の計画に沿って固体への適用を目指した理論開発も進めていく予定です。
|