2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540390
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
樋口 克彦 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (20325145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 雅彦 信州大学, 理学部, 教授 (10292202)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 対密度 / 対密度汎関数理論 / 電子相関 / 運動エネルギー汎関数 / 結合定数積分表示 / 交換相関ホール |
Research Abstract |
対密度汎関数理論の開発には二つ課題があります。一つは (i) 対密度の探索範囲の設定方法、もう一つは(ii) 運動エネルギー汎関数の近似形の開発です。対密度汎関数理論の有効性を示すためには、これら二つも課題を同時に取り扱わなければなりません。以下に、(i)および(ii)に対する平成24年度の成果を述べます。 (i)に関する成果 今年度は、昨年度(平成23年度)に提案したスケーリング法の有効性の実証をさらに進めました。昨年度までは対密度から計算できる電子間相互作用のエネルギーやポテンシャルエネルギーの値(積分量)で対密度の評価を行っていましたが、今年度は電子密度および交換相関ホールの形状から対密度の空間分布の評価を行いました。その結果、電子相互作用のエネルギーやポテンシャルエネルギーの誤差に大きく寄与する空間領域の対密度がスケーリング法により特に改善されることが明らかとなりました。このように、スケーリング法により対密度の探索範囲が効率よく拡大されることがわかりました。 (ii)に対する成果: 今年度は、運動エネルギー汎関数の厳密な表式(結合定数積分表示)を導き、それを用いて運動エネルギー汎関数の近似形を開発しました。得られた近似形は、相互作用のない系における運動エネルギーに相関エネルギーによる補正を加えた形をしています。本研究では、相互作用のない系における運動エネルギーとしてはThomas-Fermiの運動エネルギー汎関数を、相関エネルギーとしては通常の密度汎関数理論の局所密度近似を用いました。本近似形を原子系に適用して、その有効性を検証したところ、運動エネルギーは8%程度の過大評価でした。ここで得られた計算結果は、結合定数積分表示を利用して開発された近似形に対する始めてのものであり、更なる近似形開発における参照データとして用いることができます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」で述べたスケーリング法、交換相関ホールの形状による対密度の評価、結合定数積分表示を利用した運動エネルギー汎関数の近似形開発は、当初の計画にはないものです。これらは対密度汎関数理論の有効性を実証する強力なデータを提供しています。したがって当初の計画以上に進展しているといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
対密度汎関数理論の発展のためには、二つの課題「対密度の探索範囲の設定方法」および「運動エネルギー汎関数の近似形の開発」を同時に扱い、そしてそれらを解決していかねばなりません。これら二つの課題の解決に向けて、本研究は上述のように当初の計画以上に進展しています。今後は、これらの課題に対する我々の手法の改良および評価を進めると共に、当初の計画に沿って固体への適用を目指した理論開発も進めていく予定です。
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