2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540396
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 篤司 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (20323264)
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Keywords | 量子物理 / 新奇な量子ホロノミー / 例外点 / 量子情報 / 全のアンホロノミー / Floquet / 量子写像 / 断熱量子計算 |
Research Abstract |
1.固有空間のアンホロノミーでは、(擬)固有エネルギーに縮退が無い場合であっても、パラメーター空間中の閉経路における断熱的な時間発展が複数の定常状態同志を交換させる。閉経路の前後での定常状態間の重なり積分は、この現象を記述する一つの方法を与え、ホロノミー行列と呼ばれる。これまで、ホロノミー行列のゲージ共変な表式が知られていたが、これは、Wilczek-Zeeのホロノミーと同様に、必ずしも観測可能量を特定するものでは無い。これに対して、適切なゲージを見いだすことで、ホロノミー行列の標準形を求め、そこに内在するゲージ不変量を明らかにした。また、量子回路の空間における閉経路の分類を通じて、これらのゲージ不変量と、Kitagawaら(2010)の導入した周期外力系のトポロジカル整数との比較を行なった。 2.量子写像と量子回路は新奇な量子ホロノミーを持つ系の例題として重要である。一方、これらの系は離散時間中で時間発展する。このため、対応する断熱定理の証明は、通常の連続時間のものとは異なるはずである。これまで、A. Dranov, J. Kellendonk and R. Seilerによる証明[J. Math. Phys. 39(1998)1340]が知られていたが、より簡素な証明を与えた。 3.新奇な量子ホロノミー(固有値・固有空間のアンホロノミー)を持つ量子写像の必要条件として、Miyamoto-Tanaka(2007)の条件に加え、Kitagawaらのトポロジカル整数(上述)についての条件が見いだされた。 この二つの条件は十分条件では無いが、新しい模型の探索がより容易になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)新奇な量子ホロノミーとKitagawaらのトポロジカル整数との関連については、ホロノミー行列に内在するゲージ不変量を調べることを通じて、整理できた。また、これらの知見から、新奇な量子ホロノミーを持つ模型を探すことが容易になった。ただし、高次のトポロジカル整数については、非自明な物理系の例が見つからなかったため、議論ができなかった。 (2)多キュービット量子回路の例を、多粒子系の問題に還元する問題は解決法を見いだせなかった。 (3)新奇な量子ホロノミーの既存の例での断熱パラメーターを力学的自由度に昇格させる問題については、予備的な考察からMead and Thrularの境界条件を拡張すれば良いことがわかってきた。具体的な模型上での検証が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
多体問題での例を見いだすためには、上述の新しい必要条件を活用する。特に、断熱的な相互作用項としてこれまで専ら、非局所的なものを用いていたが、局所的なものの可能性を追及する。
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Research Products
(6 results)