2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540399
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松下 貢 中央大学, 理工学部, 教授 (20091746)
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Keywords | 複雑系 / バクテリアコロニー / 対数正規分布 / 宇宙背景放射 / WMAP / フラクタル |
Research Abstract |
複雑系の振る舞いは多様だが、複雑系のすべてに共通する特徴を探求し、それに隠れている単純性や普遍性の有無を明らかにすることを目標にした。 1.バクテリアは培地の固さと栄養濃度に応じて多彩なコロニー・パターンを形成する。今年度は主として緑膿菌と枯草菌の周期的コロニー成長の特性の定量的測定を行った。共焦点レーザー顕微鏡を駆使して、コロニー内の菌密度の時間的空間的変化を追い、周期的成長のダイナミクスを調べた。緑膿菌の場合、コロニーの成長界面自体はスムーズに前進するが、コロニー内でその高さが周期的に変化し、結果として同心円状のコロニー・パターンが見られることが分かった。これはプロテウス菌や枯草菌の周期的成長の場合と異なるが、霊菌とは類似する。 2.複雑系での統計性はべき乗分布と対数正規分布で特徴づけられることが多い。しかし、私たちはこれまでの研究で、複雑系では対数正規分布がより基本的な分布関数であることを基礎付けし、多くの例を提示してきた。本研究ではさらに、対数正規分布の右裾にしばしば現れるべき乗分布の社会科学的意味を明らかにした。 3.宇宙背景放射温度揺らぎのWMAPデータについて、温度揺らぎの大小を地形の高低とみなす。ある一定温度の水平面でこの地形を切断すると、等高線ループの集まりのパターンが得られる。まず、このパターンのフラクタル性をチェックした。つぎに、水平面の高度を変えた時のループの集合・離散はパーコレーションとみなせることに注目して、そのパーコレーション転移の性質を調べ、通常の場合とは異なることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バクテリアコロニー形成は当該研究室における長年の研究の歴史があり、研究が着実に進展しているが、成果に意外性がない。その点、複雑系の統計性の研究では社会科学との接点が浮き彫りになり、興味深い成果が出た。宇宙背景放射のフラクタル性、特にパーコレーション理論との関連は現時点で従来の宇宙論との関係は見えないが、興味ある成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
複雑系の統計性は、これまで統一的には議論されて来なかった。私たちは、複雑系では対数正規分布が本質的な分布関数であり、通常の線形的な世界でのガウス分布の役割を果たすという作業仮説を立てて、その確立を目指して成果を上げてきた。その意味で、この点をより一層追求しなければならない。今年度の研究によって見えてきた社会科学との関係を詳しく解明する必要がある。宇宙背景放射のパーコレーション理論との関連性は、従来の宇宙論との関係を探る必要があるだけでなく、従来のパーコレーション理論にも一石を投じる可能性がある。
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