2010 Fiscal Year Annual Research Report
自由エネルギーランドスケープ理論を用いたガラス転移現象の解明
Project/Area Number |
22540400
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小田垣 孝 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90214147)
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Keywords | 非平衡系 / 統計力学 / 物性理論 / ランジュバン方程式 / ガラス転移 / 自由エネルギーランドスケープ / 誘電緩和 / LJGポテンシャル |
Research Abstract |
自由エネルギーランドスケープの構造の変化から、ガラス転移に関わる種々の特徴を統一的に記述することを目指して、理論的計算および分子動力学シミュレーションを用いて次のことを明らかにした。(1)密度汎関数理論を用いて、剛体球系の自由エネルギーランドスケープの詳細な構造を求め、ベイスンの底と遷移状態を結んで起こる緩和過程に対して、緩和時間がフォーゲル・ファルチャー則と矛盾のない密度依存性を持つことを示した。(2)2次元上のレナード・ジョーンズ・ガウスポテンシャルで相互作用する粒子系の準結晶相における原子のダイナミックスを解析し、フェイゾンフリップとガラス系のα緩和の類似性を明らかにした。(3)2次元上のレナード・ジョーンズ・ガウスポテンシャルで相互作用する粒子系の過冷却状態の結晶化とガラス化の原子機構を明らかにした。ガラス転移点より高温側では、自由エネルギー差によって、またガラス転移温度より下の温度では遅い緩和によって結晶化が律速されることを明らかにし、さらに新しい密度-密度相関関数を導入して、結晶化が2段階で起こることを明らかにした。また、各点における粒子の滞在時間から自由エネルギーランドスケープを求める方法を開発し、一つの粒子の感じる自由エネルギーランドスケープを構築することに世界で初めて成功した。(4)3次元上のレナード・ジョーンズ・ガウスポテンシャルで相互作用する粒子系のガラス転移過程において、リンデマン比を用いて三つの特異温度T_o,T_g,T_xを同定し、それらの間にOdagaki-ruleT_g=(T_o+T_x)/2が成立することを示した。(5)ガラス転移のストキャスティックモデルに基づく単純な二準位系を用いて、誘電体の線形及び非線形応答を解析し、感受率の実部の振る舞いおよび緩和関数から三つの特異温度が決定できることを示した。
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