2011 Fiscal Year Annual Research Report
液体中の横波音波モード:X線非弾性散乱法による観測
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22540403
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
細川 伸也 広島工業大学, 工学部, 教授 (30183601)
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Keywords | 液体金属 / 格子振動 / 放射光X線 |
Research Abstract |
本年度の研究の目的は、研究代表者が世界で初めて実験的に示してきた、ナノスケール、短寿命の横波音波モードが、液体金属全般的に見いだされることを実験的に証明すること、およびそのモードの圧力依存性を測定するためにダイアモンドアンビルセルを用いた実験準備を行うことである。 液体金属の高エネルギー分解能X線非弾性散乱実験は、SPring-8のビームラインBL35XUを用いて、水銀、スズ、アルミニウム、および鉛を対象として行った。実験は、高温で試料と反応を起こさず、バックグラウンドの少ない単結晶サファイア製の試料セルを自作し、コンパクトな昇温装置を用いて測定を行った。得られた非弾性散乱スペクトルのいずれにも、横波音波によると思われる信号を見いだした。これらは、一般的な解析方法である減衰調和振動子モデルを用いたデータ解析を行い、分散関係や寿命など横波および縦波フォノンの基本的な情報を得た。さらに詳細な、記憶関数を用いた一般化されたランジュバン形式によるデータ解析も進め、さまざまなミクロスコピックな熱力学的、弾性的諸量を得て、液体中の横波音波モードの本質を明らかにすることを試みている。 これらの結果は、液体分野で最も重要な「第8回液体国際会議」で、口頭発表に採択されるとともに、2つの国際シンポジウムで招待講演を行った。また、結果は国際雑誌に1編、日本金属学会の雑誌に1編の論文として公表した。 これらと平行して、高圧下の液体ガリウムを、外熱ヒーターを使ったダイアモンドアンビルセルを用いて試験的に作成することに成功しているので、次年度にはX線非弾性散乱測定を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPring-8の課題申請が順調に採択され、最初に見いだしたガリウム以外の液体金属にも、次々と横波音波モードが存在することを実験的に明らかにしている。本課題研究の結果は、専門分野のみならず、少し外れた分野の研究者の興味を引き、国際的なシンポジウムや国内の学術講演会でも広く招待講演として取り上げられ、また日本金属学会の機関誌である「まてりあ」にも特集記事を掲載することができた。現在、得られた結果を論文としてまとめるために、詳細なデータ解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は最終年度であるので、高圧下の液体金属ガリウムの実験を軌道に乗せ、横波モードの圧力変化のようすを実験的に明らかにしたいと考えている。また、これまで得られた実験結果について、さらに信頼できるモデルをもとにしたデータ解析を精力的に行い、液体中に存在するとされる「かご」クラスターのミクロな弾性的性質を求め、短寿命クラスターの本質を明瞭に示したい。得られた結果は、国際的な物理雑誌に投稿を重ね、結果を広く公表していきたい。
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