2011 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性が局所的に破れた物質群が示すガラス的物性の起源と機構
Project/Area Number |
22540404
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 恒義 北海道大学, 名誉教授 (80002236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兼下 英司 仙台高等専門学校, 准教授 (60548212)
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Keywords | THZダイナミックス / 内包系物質 / クラスレート |
Research Abstract |
空間反転対称性が局所的に破れた物質群、特にクラスレート化合物の特徴は籠の中に含まれるゲストイオンの対称性の破れによりその物理的性質が大きく変化することである。その典型的な実験例はフォノン熱伝導の測定である。精度の高いフォノン熱伝導の測定により明らかにされたことは、ゲストイオンがオンセンターの場合とオフセンターでは全く違う物理的特性を示すことであった。 フォノン熱伝導は、フォノンによる動的散乱を反映したものであるから、その測定データにはTHzエネルギーでのダイナミカルな情報が含まれている。通常のオンセンター系とは違いオフセンター系では、数Kから約10Kまでの温度領域で、ガラスの場合とまったく同じプラトー熱伝導を示し、1K以下では同じく温度T2―εに比例する熱伝導を示す。このようにゲストイオンがオフセンターになるとフォノン熱伝導の性質がガラス的になる。すなわちゲストイオンの状態の違いが、興味ある物性発現のカギを握っている。本年度は以上の課題について次のことを明らかにした。ガラス的な振る舞いは、カゴに閉じ込められたゲズトイオン単独のダイナミックスを反映したものではないこと、フォノン熱伝導のプラトーの起源は低エネルギーの光学モードとの結合にあること、オフセンター系に対しては、温度に依存しないブロードなスペクトルが観測されたが、これは対称性が局所的に破れたことを反映している事などを明らかにした。また、オンとオフセンターの状態の違いにより、熱的物性が大きく変化するが、これに対する電子のドーピング濃度の依存性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的についての達成度は、計画通りに進んでいると考えられる.国際研究集会での発表、学術論文としての発表なども順調に行われている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではさらに実験研究者との連携を深め、理論的な深化を行う.そして世界の研究者との情報交換を行いさらに広範囲な研究を遂行する.最終的にはこの基盤研究の(C)の成果を世界的にも著名な学術誌に総合報告として発表することを計画している.
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Research Products
(12 results)