2011 Fiscal Year Annual Research Report
基底状態の量子もつれ破壊と量子エネルギーテレポーテーションの理論研究
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22540406
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀田 昌寛 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60261541)
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Keywords | 量子力学 / 量子プロトコル / 量子エンタングルメント / 量子エネルギーテレポーテーション |
Research Abstract |
今年度は研究計画に則りながら、量子エネルギーテレポーテーション(QET)の理論研究を行った。研究発表においても、2011年7月に米国で行われたInternational Conference on Computing, Communications and Control Technologiesという国際会議において、QETの総合報告がApplications of Informatics and Cybernetics in Science, Engineering and other areasというセッションでの"Session's Best Paper Award"を受賞した。門同時にこのレビュー論文が会議全体での"the best 10% of the papers"にも選ばれ、the Journal of Systemics, Cybernetics and Informaticsから出版される会議録にも収録予定である。量子ホール端電流を用いたQETの実験的検証のための基礎的理論研究にも進展があった。ホール端の励起の典型的速度は10の6乗メートル/秒で、非相対論的物理系でのQETが適用できるが、それでも古典通信部分とそれに連なる量子操作に関してはかなり素早く実行する必要があった。そこで実験可能な技術レベルに近い実験装置の具体的配置を考え、ホール端電流の真空状態の量子揺らぎ局所的測定完了後に電流上流部分へその測定情報が遡るようにし、そこでの真空揺らぎから測定結果に依存した操作によって零点エネルギーの一部を取り出せる設定を提案した。特にエネルギーを取り出すための最後の局所的操作部分については別な量子ホール端系を使用することで、素早い操作の実現が可能であることを見出した。同時に、真空揺らぎから取り出された転送エネルギーはこの第2のホール電流によって外部に輸送されるが、それを直接観測することも有望であることが判明した。第2のホール電流に上乗せされる転送エネルギーは、この実験提案だと100マイクロ電子ボルト程度が見込まれ、実測可能なオーダーである。 またNIIのByrnes氏らの実験グループとともにボーズアインシュタイン凝縮系(BEC)でのQET検証実験可能性の理論研究も進行中である。量子不等式を用いた量子もつれ破壊と転送エネルギー量の関係性の研究も順調に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災に見舞われだにも関わらず、量子ホール端電流系における量子エネルギーテレポーテーションの実験的検証のための基礎研究で大きな進展があったのみならず、BECでの実験検証のプロジェクトも動き出した現状にあるため。また真空における量子もつれ破壊とエネルギー転送量の関係性についても近日成果をまとめて発表できる状況になっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ホール端電流系における量子エネルギーテレポーテーション(QET)の理論的基礎研究を積み重ね、その実績を基にして実験家とともに実験用の予算を獲得して、できるだけ早く実験が開始できるように努力をする。またBECや他の物理系でのQETの実験検証の可能性を理論的に検討をし、将来のQETの工学的応用に対して幅広い選択肢を与えられるようにしたいと考えている。また量子もつれ破壊の数理的構造をもっと深く掘り下げ、QETによるエネルギー転送量との明示的関係性を明らかにしていきたい。
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