2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540410
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷村 省吾 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (90273482)
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Keywords | ベルの不等式 / 量子論理 / 量子相関 / 代数的量子論 |
Research Abstract |
ベルの不等式は、ある物理量の期待値の上限と下限を与える不等式であり、古典力学の論理に基づいて証明される。ところが、量子力学の論理は、期待値がベルの不等式の許容範囲の外にも存在することを導くので、ベルの不等式は古典と量子の論理構造の違いを浮き立たせる。しかし、従来のベル不等式に関しては、古典論理はつねに量子論理の範囲内に収まる予測を与えるので、古典論と量子論の公平な比較検証方法とは言えなかった。私は、この点を改善して、古典論と量子論の予測値が、一方が他方を包含するのではない、公平な比較が可能であるような物理量を見つけ、その期待値が満たす不等式を証明した。この結果は、従来の「古典力学は、量子力学の特別な場合であり、量子力学に包含される」という素朴な理解を覆すものであり、古典論と量子論の位置づけを革新的に改めるものである。しかもそれが単に思弁的な相違点ではなく、物理実験として検証可能な相違点であることを示したという意義がある。この成果は論文として学術雑誌(Progress of Theoretical Physics)に出版し、国際的な研究会でも発表した。さらに、実験家とも討論して、この理論式を実験検証するための方法を探っている。 また、量子力学の最新の定式化として代数的量子論と呼ばれる理論構成があるが、この理論は高度な数学を用いるので多くの物理学者たちからは敬遠されていた。私は、代数的量子論は量子力学の本質を正しく、しかも直観的に理解するのにうってつけの方法であることに気づき、代数的アプローチを中核とする量子力学の再構成を試みている。この理論は雑誌「理系への数学」に連載して発表している。
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