2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模分子シミュレーションによる直鎖アルカン薄膜の表面融解・表面固化機構の解明
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22540419
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤原 進 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30280598)
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Keywords | 高分子構造・物性 / 表面・界面物性 / 計算物理 / 可視化 |
Research Abstract |
直鎖アルカンは、バルク融点より数度高い温度域で、分子鎖が表面に対して垂直に単分子膜を形成するという特異な現象を示すことが知られている。この現象は、低分子系における表面融解と対照的な現象で、表面固化現象と呼ばれている。昨年度に引き続き、本年度も、直鎖アルカン薄膜の表面融解・表面固化機構を系統的に解明するため、自由表面を持つ直鎖アルカン超薄膜の分子動力学(MD)シミュレーションを行い、融解過程に対する鎖長の影響を調べた。また、水中における直鎖アルカン超薄膜のMDシミュレーションにも取り掛かった。直鎖アルカンの分子モデルとして、ユナイティッド・アトムモデルを採用する。粒子間の相互作用は、共有結合によるものと非共有結合によるものに分けられる。共有結合ポテンシャルとして、伸縮ポテンシャル、変角ポテンシャル、及び、内部回転ポテンシャルを考える。非共有結合ポテンシャルとして、レナードージョーンズポテンシャルを考える。また、水の分子モデルとして、水分子を剛体回転子として扱う3点電荷モデルTIP4Pを用いる。鎖長の異なる直鎖アルカンとして、n-nonane(C_9H_<20>)とn-nonadecane(C_<19>H_<40>)を用い、温度・圧力一定のMDシミュレーションを行う。初期配置として、一層あたり168分子を3~9層並べた結晶を用意し、MDセルに納める。分子鎖軸方向(膜に対して垂直な方向)に二層分の厚さの真空あるいは水の領域を用意し、周期境界条件を適用する。系の温度を徐々に上げ、融点の特定および融解過程の解析を行う。自由表面を持つ直鎖アルカン超薄膜の場合、n-nonaneは表面から、n-nonadecaneは内部から融解することが明らかになった。膜厚が変化しても融解様式は変化しないことから、分子鎖長が融解様式を決定する重要な因子であると考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直鎖アルカン超薄膜の分子動力学シミュレーションを行い、融解過程に対する鎖長の影響を系統的に調べた結果、n-nonane(C_9H_<20>)の場合は表面から、n-nonadecane(C_<19>H_<40>)の場合は内部から融解することが明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、直鎖アルカン薄膜の表面融解・表面固化機構を系統的に解明するため、自由表面を持つ直鎖アルカン超薄膜、及び、水中における直鎖アルカン超薄膜の分子動力学(MD)シミュレーションを行い、融解過程に対する鎖長の影響を系統的に調べる。また、表面固化現象の普遍性を追求するため、直鎖アルカン薄膜の水との界面における界面活性剤誘起表面固化現象をMDシミュレーションにより解析する。特に、表面固化状態における界面活性剤分子の凝集構造を明らかにする。
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