2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540421
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 講師 (60573243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見 利也 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (10270472)
菊地 浩人 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00224907)
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Keywords | 生物物理 / 化学物理 |
Research Abstract |
近年、生体分子の振動状態を動的に検出することのできる、時間分解分光の技術が発達してきており、生物学的に重要な知見をもたらしている。本研究では、そういった時間分解分光に対応する時間スケール(ピコ秒~ナノ秒)の生体分子の量子ダイナミクスを理論・計算的手法で明らかにすることを目的とする。この時間スケールは生命現象を語る上で非常に短い時間スケールであるが、機能の第一段階のステップとして重要である。生体分子の特性を十分つかむために、単純化したモデル計算ではなく、量子化学計算を用いて、ポテンシャル面を精度よく記述する。その後に、励起された振動モードからのエネルギー移動を調べるために、アクティブな状態空間を切り出し、その空間内で効率的な量子ダイナミクス計算を行う。その方法論を確立し、いくつかの生体分子に関して実験との比較を行い、その応用として、レーザー外場をかけた場合の制御の問題も取り扱う。 Gerhard Stock教授とのフライブルグ大学(ドイツ)での共同研究により、分子階層モデルによって量子ダイナミクスを記述する新しい方法論を見出し、それを実装した。また、その際の具体例としては、小さな生体分子である、N-methylacetamide(12原子)や、アミドIモードをもつPBN分子(29原子)を取り上げ、具体的に量子ダイナミクス計算を実行した。その結果、前者ではアミドIモードの振動緩和は非常に速い(サブピコ秒)が、後者ではゆっくりしている(数十ピコ秒)ことが分かった。これは物理的には、前者ではアミドIモードが近接しているモードと強くカップルしているのに対して、後者ではドアウェイ・モードが空間的に離れているためである。ただし、PBN分子に関しては、Rubtsovらによる実験ではアミドIモードと遠く離れた振動モードが動的にカップルしていることが分かっているので、それを再現するために、アクティブ空間のより効率的で大規模な切り出し方を試している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、既に生体分子に対する量子ダイナミクスの方法論を確立し、ミオグロビンのような大きな生体分子をQM/MM計算してポテンシャルの非線形を調べているはずであるが、まだ、方法論の調整を行っている段階である。また、去年度はレーザー制御の問題も十分に進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
やや遅れ気味ではあるが、生体分子に対する量子ダイナミクスの方法論は確立されつつあるので、後は具体的な分子に対する応用計算を進めればよい。今年度は、方法論に関する論文をまとめながら、ミオグロビンに対するQM/MM計算、また、レーザー制御の問題に取り組む予定である。これらは分子階層モデルのハミルトニアンを作るための方法論ができれば比較的、速く進むものと期待される。また、これらを効率よく並列計算するためのハードやアルゴリズムもすでに申請者のところに存在している。
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Research Products
(17 results)