2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540422
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
岩松 雅夫 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (20201345)
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Keywords | 核生成 / 不均一核生成 / 複合核 / ぬれ / ダイナミックス |
Research Abstract |
現実の核生成は多くの場合、表面や不純物を介して生じる「不均一核生成」であり、平成22年度は特に平らな基盤上で生じる不均一核生成の問題と球形の不純物のまわりで生じる不均一核生成の問題の2つを中心に研究を行った。平成23年度はこの成果を発展させ、マクロな世界での「ぬれ」現象がミクロスコピック、あるいはメゾスコピックな尺度では不均一核生成となることを指摘した(M.Iwamatsu,"Heterogeneous critical nucleation on a completely-wettable substrate",J.Chem.Phys.134,234709(2011))。また、球形不純物のまわりで生じる不均一核生成の問題を準安定状態を中間状態にもつ「複合核」の核生成の問題と結び付け、中間状態をもつ核生成が100年以上前に指摘されたOstwald則に従う場合だけでなく、別の可能性もあることを発見した。さらに核生成の「ダイナミクス」をFokker-Planck方程式を用いて調べ、定常核生成頻度の一般的な公式を導き、これが良く知られている電気抵抗の直列と並列の公式と相似形となることを示した(M.Iwamatsu,"A note on the nucleation with multiple steps:Parallel and series nucleation",J.Chem.Phys.136,044701(2012))。前者の結果からは、今までエネルギーバリヤーが存在しないと考えられていた不均一核生成でも、バリヤーが存在し、バルクの核生成のためではなくぬれ膜の生成のため活性化が必要となり、実験的にはバリアーレスの不均一核生成としては観測されない場合があり得ることが明らかになった。また、後者の結果は、生体材料など中間物質を介しての核生成と成長が生じる複雑な核生成現象を整理する上での有用な公式であり、今後、工業的にこのような生体材料の生成する場合などでも有用な指針の一つとなるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、ダイナミクスの取り扱いに密度汎関数理論あるいはphase field modelの採用を考えていた。しかし、この2年ほどヨーロッパを中心にこの2つを統合した動的密度汎関数理論を用いた研究結果が発表され始めている。研究代表者もこれらの論文の一部の査読の依頼を受け、詳細に検討を行ったが、現実的なシミュレーションを行える範囲が限られており、より基礎的はMaster方程式、あるいはFokker-Planck方程式を用い一般的な確率過程として扱う方が先決であり将来的に応用の範囲が広いと判断し、平成23年度はこの方針で研究を行った。今後、動的密度汎関数理論と一般的な確率過程の理論をつなぐ研究が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、平成23年度に扱ったぬれと核生成を結びつける問題と核生成のダイナミックスの問題を、前者についてほ曲率をもつ基盤上に拡張し、基盤の大きさが有限となる効果を考察しており、平成23年度の結果と併せて、6月にカナダで開催予定の「ぬれ」や「吸着」問題のシンポジウムで発表する予定となっている。また、後者については、中間状態をもつ場合の核生成の反応経路およびダイナミクスを明らかにすることを試み、すでに論文1編がJournal of Chemical Physicsに掲載予定となっており、さらにもう一篇も準備中である。今後、これらの結果をさらに発展させ、環境効果として、基盤からの単純な分子間力だけでなく、電気力、あるいは弾性力などの場合の特徴を明らかにする。
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