2011 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレントX線と計算機実験の融合利用による生体分子―水界面構造の解明
Project/Area Number |
22540424
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
城地 保昌 財団法人 高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 研究員 (30360415)
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Keywords | 生物物理 / 構造解析 / 溶液構造 / コヒーレントX線 / X線回折顕微法 / 水和 |
Research Abstract |
生体分子は、環境媒体である水中で機能する。生体分子の機能を物理化学的に理解するには、生体分子溶液の構造物性を解明することが不可欠である。本研究では、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAの利用実験により今後の発展が期待されるX線回折顕微法と、高精度計算科学を組み合わせることにより、生体分子溶液の構造物性を高分解能で解明するための方法論を開発することを目的としている。平成23年度は、次の成果を得た。 1.回折強度における水-生体分子クロス項の寄与の解析 生体粒子を含む液滴からの回折強度は、(i)生体単粒子からの回折強度、(ii)水からの回折強度、(出)水-生体分子クロス項に分類できる。リボソーム溶液モデルを用いた計算機実験により、(iii)水-生体分子クロス項の寄与を調べたところ、溶液の概形に対応する散乱領域、および、水分子の近距離相関に対応する散乱領域で顕著であることが分かった。解析結果を基に、現在、クロス項の寄与を実験データから見積もる手法を検討している。 2.位相回復法の高速化 X線回折実験では、立体構造を解析するために必要な位相が測定されない。そのため、X線回折顕微法では、フーリエ変換を繰り返し利用した計算科学的手法により、位相情報を回復する。3次元フーリエ変換では大きな実行メモリが必要になり、また、3次元フーリエ変換を効率的に分散並列処理するのは難しい。本研究では、フーリエ変換ではなく、位相回復法そのものを並列化することにより、計算ノードあたりの実行メモリを減らし、高速化する手法を開発した。本手法は、現在主流の分散並列型コンピュータに適したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の重要課題である、回折強度における水-生体分子クロス項の寄与を見積もる手法を開発するには至っていないが、計算機実験を利用した生体溶液の回折強度データ解析は概ね順調に進んでいる。また、本研究の副産物として、立体構造解析に必要な高速位相回復法を開発することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験データから回折強度における水-生体分子クロス項の寄与を見積もる手法を開発することが平成24年度の重要課題である。まず、水-生体分子クロス項を、空間スケール毎に分割して調べることで、その特徴を理解することに努める。その知見を基に、生体分子溶液の構造物性を解析する手法を提案したい。
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[Journal Article] 検出器・データ取得システム・実験機器制御・解析2012
Author(s)
初井 宇記,亀島 敬,小野 峻,桐原 陽一,工藤 統吾,小林 和生,遠茂谷 誠彦,尾崎 恭介,城地 保昌,徳久 淳師,堀米 利夫,山鹿 光裕,古川 行人,清道 明男,杉本 崇,広野 等子,大端 通,Arnaud Amselem,田中 良太郎
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Journal Title
日本放射光学会誌「放射光」
Volume: 25
Pages: 82-88
URL
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