2011 Fiscal Year Annual Research Report
固形粉体の破壊モルフォロジー転移とスローダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
22540425
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Research Institution | Kanagawa Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
津留崎 恭一 神奈川県産業技術センター, 化学技術部, 研究員 (90426388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白崎 良演 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (90251751)
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Keywords | 固形粉体 / 粒度分布 / 破壊モルフォロジー / ガラス転移 / ジャミング転移 |
Research Abstract |
本研究課題では,固形粉体に外力を加えて破壊したときに生じる破壊断面のモルフォロジー変化と粉体系の示す転移との関係を調べている。これまでの研究で,粉体の付着力を一定にして粒径分布幅を増やしたとき,破壊パターンが亀裂から粉砕に変化し,さらにこの変化がガラス転移の様相をみせることが明らかになった。粉体系が示す転移としては,もう一つジャミング転移が知られている。付着性粉体が示す破壊モルフォロジー変化と従来知られている粉体系が示す転移との類似点と相違点を明らかにし,これらを理解する統一的な枠組みを構築することを目的としている。 ガラス転移は分子の温度を下げたとき,ジャミング転移は粉体の数密度を上げたときに,それぞれ流動相から固体相へと移り変わる転移である。我々がこれまで使ってきた付着性粉体のシミュレーションでは,付着力を粒子同士の重なり度合いに応じて計算しており,その意味では系は分子に近いといえる。一方,粉体のジャミング転移に関する結果は,剛体つまり球同士の重なりや変形を許さない極限について言えることであった。 当初,弾性率を大きくすることで粒子を剛体に近づけようと試みたが,通常のDEM法では粒子同士の僅かな重なりでも相互作用が発散し,安定してプログラムを実行することができなかった。このため,完全剛体球の衝突イベントを解析解で厳密に計算するEvent Driven型MD法のプログラムを作成し,その応用として粒度分布のある剛体気体という仮想的な系を考えた。 一つの狙いは,剛体気体を考えることによって気体の状態方程式のレベルで温度Tと粒度分布の間に関係があるかを調べることである。研究の結果,粒度分布を大きくするとVW式からのずれが大きくなり,このずれはTの項に粒径分布に比例する項を加えることによって上手く補正できることが分かった。これは,先のガラス転移との類推で得られた温度と粒度との類似関係があるという予想と一致する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
剛体が希薄な時は気体の状態方程式と粒度分布の関係が分かったが,密に詰まったときの詰まり方を調べることはできず,年度当初の目標の半分程度の達成に止まった。研究が進まなかったのには様々な要因があるが,主としては年度当初は震災対応の仕事に迫われたことと,中盤は夏の電力制限に伴って実験室の冷房が停止しPCを動かせなかったことが大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,昨年度作製した剛体球のシミュレーションプログラムを改良し,大規模な系で剛体気体の状態方程式から粒度分布と温度との関係を調べる。さらに,ジャミング転移が起こる粉体密度領域で,最小接触点数Zと密度ρの関係を得る。これまでの研究でZとρとの間にスケーリング則が成り立つことが知られているが,これは粒度が一定もしくは僅かに異なる場合であった。粒度分布を広げることで,どの様にジャミング転移のスケーリング則が変更されるか調べる予定である。また,合わせてスローダイナミクスの有無についても調べ,ガラス転移との関係も探る。昨年度,問題となった冷房停止については,今年度も継続される予定のため,研究場所を横国に移すなどして対応する。
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