2011 Fiscal Year Annual Research Report
海溝型地震研究に向けた海底測地・地震観測のための海底圧力・地震計の開発
Project/Area Number |
22540428
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠原 雅尚 東京大学, 地震研究所, 教授 (90242172)
|
Keywords | 高精度圧力計 / 海底圧力・地震計 / 海底上下変動観測 / 広帯域観測 |
Research Abstract |
海溝型地震の予測・予知のためには、繰り返し地震を発生している領域であるアスペリティや地震を発生せずに滑りを起こしている領域(非地震性滑り域)の空間分布を精度良く明らかにする必要がある。そのためには、直上である海底において地震波の帯域から測地帯域までの観測が必要である。地震波帯域では、地震研究所が開発した広帯域海底地震計による観測が実現している。半年から数年以上の測地帯域における観測では、GPS-音響結合(GPS/A)方式による海底水平変動観測が実用化されつつある。数百秒から数ヶ月にわたる帯域での海底の上下変動を観測するためには、高精度の水晶発振子を用いた圧力計が適している。さらに、圧力計は数秒よりも短い周期まで観測可能であり、津波計としても利用可能である。そこで、現在使用されている長期観測型海底地震計に、圧力計を付加することにより、地震波の帯域から測地帯域までの超広帯域長期観測を可能とする海底地震計を開発することを目的としている。平成22年度には、使用する圧力計センサーを、カタログデータなどにより選定した後、評価を行った。その結果、圧力変動計測に関して十分な分解能を有していることが確認された。さらに、現在地震研究所が用いている長期観測型海底地震計用レコーダを基にして、記録を行うレコーダの開発・改良を行った。その後、圧力計センサーの耐圧容器への取り付け方法の検討及び記録システムの設置方法について検討・設計を行い、試作機を開発した。開発した海底圧力・地震計は、観測データを取得するために、平成23年1月に、南海トラフに設置し、平成24年2月に回収した。海洋潮汐を良好に記録していると共に、観測中に発生した平成23年東北地方太平洋沖地震の地震波および津波が記録された。また、東北地方太平洋沖地震の余震観測を行うために、開発した海底圧力・地震計を東北沖に設置した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・本研究における海底圧力・地震計は、平成22年度に試作を完了し、実際に海底に設置し、試験観測を開始できた。 ・平成23年度には、前年度に設置した海底圧力.地震計を回収した。また、東北地方太平洋沖地震の津波を含むさまざまな圧力変化を記録することができ、交付申請書に記載した「研究の目的」を達成しつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在得られている海底での試験観測データおよびこれから回収予定の海底圧力・地震計のデータを用いて、記録の評価を行う。記録の評価は、陸上に展開されている測地観測網のデータと比較すると共に、同一容器内に設置した従来の広帯域地震計の記録と比較することで行う。また、震源過程が明らかになっている地震が観測された場合については、求められている震源域および余効滑り域から期待される変動と観測された変動との比較を行う。また、開発した海底圧力・地震計は、長期のデータを蓄積することも、測器の性能評価には重要であるので、引き続き観測を実施する。
|