Research Abstract |
本研究の目的は,比較的単純な噴火形態を繰り返す火道システムの確立した火山を対象に振動現象の観測データから,火道浅部の内部状態を推定する方法を確立し,一連の噴火活動中での噴火様式変化の推定に結びつけることである.この研究目的を達成するため,1)数理モデルをベースに,火道が閉塞状態及び開放状態であったときの微動・長周期地震を見直し,火道浅部での流体の噴出率と微動・長周期地震活動との関係を明らかにする,2)確立した火道システムを持つより広範な火山への適用を視野に入れ,火道長,流体噴出率,火道への流体圧に注目した室内実験を行い,より一般的に火道内部の状態と期待される振動現象との関係を明らかにする,という2つのアプローチからこの研究課題の達成を目指す.当該年度に,第1のアプローチでは,浅間山で観測された非線形微動データを用いて,その励起に関わる非線形微分方程式の形式に関する情報を直接推定する新たな解析手法の開発に着手した.浅間山の火口近傍の観測点で記録された微動は,その波長と震源までの距離を考えると,ほとんど地震波伝播の影響がなく,励起源でのパラメータを直接表していると見られるため,観測されたデータが非線形微分方程式系の解の一つを表していると考えて,位相的なアプローチで方程式系の特徴を把握しようとする試みである.第2のアプローチでは,リコーダやストロー笛を用いた実験により基本モードに高次モードが重畳したハーモニックな波動が流入圧の変化により,不連続に変化する結果を見いだした,これは,微動のスペクトルの不連続な変化が必ずしも,励起源における不連続な変化を必要とするものではないことを示しており,観測された微動を解釈する上で重要な知見と言える
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