2011 Fiscal Year Annual Research Report
コア対流変動・マントル対流・表層変動を考慮した地球回転変動の研究
Project/Area Number |
22540440
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中田 正夫 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (50207817)
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Keywords | 地球回転変動 / 磁場変動 / コア・マントル結合 / チャンドラー極運動 / コアダイナミクス / マントル深部レオロジー / マントル対流 / 氷床変動 |
Research Abstract |
本研究においては,[i]「地球磁場の急激な変動に関係したコア表面流を原因とする地球回転変動の研究」と、[i]「マントル対流と氷床変動の効果を考慮した極移動評価に基づくマントル対流の時間変化の研究」に基づき、地球回転変動のメカニズム、マントル深部と内核の粘性率、マントル深部と核の電気伝導度、内核表面での半径方向(radial成分)の磁場強度、マントル対流の時間変化に関する研究を遂行し、地球内部ダイナミクス、コア・マントルカップリング、Chandler wobbleの励起、短周期(数年以下)のコアダイナミクスの研究に貢献することを本研究の目的とする。本年度は,主に,以下の2項目の研究を推進した。 (1)急激な磁場変動に関係した外殻の表面(コアとマントル境界面(CMB)の流れが短周期(1~2年程度)の地球回転変動にどのように影響するかを評価した。前年度,自転速度の時間変化は観測値をほぼ説明するが,極運動の計算値は観測値を説明することができないことを明らかにした(2010年度国際誌掲載)。そのため,本年度は,地形結合(CMB境界の地形の凹凸)をも考慮したモデルの定式化を行い,現在数値計算を行っている。 (2)前年度,Chandler wobbleの減衰と地球の潮汐変形が,最下部マントル(D"層)の粘性率に非常に敏感であることを定量的に評価し,D"層の粘性率は下部マントル(D"層より上部)より3桁程度小さいことを求めた(2011年度国際誌に掲載)。今年度は,そのモデルを発展させ,(i)D"層がマントル対流の下部熱境界層,(ii)D"層内で小規模の対流が生じている,という2つのモデルに基づき,温度依存性を考慮したD"層の粘性率構造を評価した。その結果,層内での温度上昇,コア・マントル境界の温度,コアからマントルへの熱の輸送等に関する新たな知見を得,現在論文作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地球磁場の急激な変動に関係したコア表面流を原因とする地球回転変動の研究に関しては,ほぼまとまり,2010年度にその成果を国際誌に発表した。マントル対流と氷床変動の効果を考慮した極移動評価に基づくマントル対流の時間変化の研究に関しては,この研究テーマの基礎になるD"層の粘性率構造を,Chandler極運動と潮汐変形によりをほぼ明らかした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,マントル対流と氷床変動の効果を考慮した極移動評価に基づくマントル対流の時間変化の研究を中心に行う予定である。観測された極移動は,マントル対流と,最近の地球温暖化に伴う海面上昇や氷床等の融解の効果を含んでいる。そのため,現在,最近の地球温暖化に伴う海面上昇や氷床等の融解データの収集及びプログラムの開発を行っている。これらのデータと今年度のD"層の粘性率構造の成果を総合的に評価して,数値計算及びデータ解析をもとに本研究を推進していく予定である。
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