2011 Fiscal Year Annual Research Report
日印リモート蛍光X線探査による月面元素組成の決定:「粗さ効果」補正の適用
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22540442
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
岡田 達明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (30321566)
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Keywords | 月探査 / 蛍光X線分光 / かぐや / チャンドラヤーン1号 / 表面粗さ効果 / 主要元素組成 |
Research Abstract |
平成23年度研究目的は日本の月周回機「かぐや」とインドの月周回機「チャンドラヤーン1号」によるX線観測データの解析を進め,定性的な月面の元素分布の導出を継続することである.太陽X線が励起源であることから太陽活動度に強く依存するため,観測領域が限定され,かつS/N的にも低いデータが多い.海外研究者との共同研究によって月面の海および高地の一部領域について主要元素組成を調査することができた.高地と海での典型的な元素組成の差異は得られているが,アポロ着陸地点など組成既知の地域での較正による定量化が必要であり,今後の課題と言える.その成果はNarendranath et al.(2011),Weider et al.(2012)で報告された. 両論文では表面粗さ効果について考慮されている.但し,今回の解析範囲では太陽X線の位相角は小さく,粒子サイズ効果の影響は大きくないが,Ae/Siが大きめに出るなど鉱物効果の影響がみられるという指摘がある.詳細には今後の室内実験によって正しく解釈される必要がある.今年度において表面粗さ効果の基礎研究では,主に過去の実験データを用いた数値モデル化について進めた.その結果は第8回AOGSで報告した. なお,太陽活動度が低い影響を強く受けた関係から,次期ミッションへの検討も開始している.基本的には「かぐや」搭載の観測機器を主体とする改良型であるが,比較的小型の月周回機での実現性について検討を進めた.その結果は第43回LPSCで報告した.今後は国際協力ミッションとして進めてゆく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光X線観測のデータから月面の主要元素組成の分布を求めることについて国際協力チームによってすすめられ,初期論文を2本出版することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
月面からの蛍光X線の励起源となる太陽X線の放射が太陽活動度の低調により弱く,月面の全球の元素分布を作成することは事実上不可能である.比較的良好なS/Nでえら得た一部の領域のみでの結果となる.但し,月面表面地形との比較によって,科学的な意義づけは十分に可能である.そのデータ解釈に必要な表面粗さ効果について考慮するための室内実験とモデル化を進めることが重要である.特にモデル化作業が遅れており,今後はモデル化に重点をおく予定である.
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