2011 Fiscal Year Annual Research Report
北太平洋亜熱帯循環におけるサブダクション過程と表層栄養塩濃度変動の関係
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22540445
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
須賀 利雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70211977)
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Keywords | サブダクション / 亜熱帯循環 / 溶存酸素 / 栄養塩 / 亜熱帯モード水 / 溶存態有機物 / 粒子状有機物 / プロファイリングフロート |
Research Abstract |
東北大学および海洋研究開発機構が2005~2009年に共同で北太平洋亜熱帯域に展開した酸素センサー付プロファイリングフロート16台のうち、亜熱帯モード水形成・分布域を数カ月以上漂流したフロート3台を抽出し、さらに、100%に近いと想定される表層10dbarの酸素飽和度の時間変化の考察および時空間的に近接する高精度船舶観測データとの比較から、酸素センサーのドリフトとバイアスを評価して、そのうちの2台が溶存酸素の時間発展の解析に有効であることを確認した。フロートの観測深度は海面から500mまで、観測間隔は5日である。フロートによる観測は厳密にはラグランジュ的ではないが、水温・塩分・渦位特性に基づき、同一水塊中のものとみなせるプロファイルのみを抽出し、その時間発展を用いて、有光層より深い層(およそ100m以深)について、等密度面ごとの溶存酸素の減少トレンドを求め、酸素時間変化率を見積もった。その結果,亜熱帯モード水の存在する密度帯(25.0~25.4σ_θ、深度範囲約100~350m)で大きな減少率(-35~-60μmolkg^<-1>yr^<-1>)が示された。これは、亜熱帯モード水が沈み込む直前に保持する大量の溶存態有機物が移流過程で再無機化されるとした物理・生物モデルによる先行研究の結果と整合する結果である。また、溶存酸素減少率が亜熱帯モード水内で下方に向かって単調に減少していることを明らかにし、溶存態有機物と粒子状有機物の酸素消費への寄与を分離できる可能を示した。以上の結果は、当該海域における酸素消費・栄養塩再生の鉛直分布を酸素時系列データからはじめて明らかにしたものである。 白鳳丸KH-11-8次研究航海Leg2によって、北東太平洋を中心に70点以上のCTD・採水観測、約30点のXCTD観測を実施し、ほぼ計画どおりに、サブダクションおよびその栄養塩分布との関係に関するデータを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要な目的であった酸素センサー付きプロファイリングフロートのデータによる溶存酸素消費速度の見積りのための手法を確立し、酸素時間変化の実測に基づく酸素消費速度の鉛直プロファイルをはじめて示すことができ、もうひとつの主要な目的であった東部亜熱帯循環域における観測もほぼ計画通りに実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度に確立した酸素センサー付きプロファイリングフロートのデータによる酸素消費速度の見積りには、フロートが同一水塊中を比較的長時間漂流する必要があり、この条件を満たすフロートが限られていたため、酸素消費速度の水平分布を調べることができなかった。2010年以降に展開してフロートのデータも蓄積されてきたので、今後は、この新たなデータを解析することにより酸素消費速度の空間分布を調べる。また、H24年度には、H23年度よりも一季節遅い時期に白鳳丸で同海域の観測を実施する計画である。両年のデータを比較することにより、サブダクションとその栄養塩分布の関係の季節・年々変化の情報を抽出することを目指す。また、気象庁による統計137度長期定線観測資料の解析により、亜熱帯循環における栄養塩濃度の長期変動の解析を進める。
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