2011 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷渦による寒気内低気圧発達の力学に関する、理想化実験・渦位解析を用いた研究
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22540446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊賀 啓太 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60292059)
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Keywords | 寒冷渦 / 寒気内低気圧 / 渦位 / 波の相互作用 / 圏界面波動 / シアー流中の中立波 |
Research Abstract |
本年度の研究では、上空の寒冷渦が寒気内低気圧に与える影響を調べるために、,メソ気象モデルを用いて行った寒気内低気圧発達の理想化実験の結果を解析し、上空の渦が地面付近の擾乱を励起・発達させるメカニズムを明らかにした。この解析によって得られた結果は以下のようにまとめられる。 上空の渦が下層の擾乱を励起する仕組みとして、上空の渦による南北流によって、傾圧性を持った地表面付近で温位が移流されてそれに伴う渦位偏差が下層の渦になるというものと、上空で高渦位偏差の移流がある時にはその前方で上昇流が生じてそれに伴う渦のストレッチ効果により下層の低気圧渦ができるというものとの、二つの代表的な説明があるが、まず、下層の傾圧性による影響を調べるため、傾圧性が対流圏の上部のみに存在して地表付近には温位勾配のない設定で実験を行い、この場合でも下層に顕著な渦が発達するという結果が得られた。下層の傾圧性がなくても擾乱が発達したことから、下層の擾乱の励起に地表面付近の温位勾配による効果は重要ではないことが明らかになった。 さらに、下層の渦が発達した理想化実験の結果のデータをもとに、渦度方程式の各項を評価したところ、渦の発達においてストレッチ項が重要な役割を果たしていることがわかり、また、オメガ方程式の各項を評価したところ渦のストレッチ効果による説明と整合的な釣り合いが成り立っていることがわかった。これらから上空の渦による下層の擾乱の発達のメカニズムとして、高渦位偏差の移流の前方の上昇流による渦のストレッチによる効果が大きな役割を果たしてことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の理想化実験による擾乱発達の再現と、今年度のデータ解析による発達過程の仕組みの解明という主要な部分に関しては予定していた研究をほぼ遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
上空の渦の「寒気」としての役割に特に注目した条件設定で理想化実験を行い、その結果の解析を進めていく。最終年度にあたるため、これまでの成果との関連性も意識しながら実験・解析を進める。
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Research Products
(6 results)