2011 Fiscal Year Annual Research Report
台風海洋間の多階層渦による相互作用の解明と海洋酸性化に与える影響評価
Project/Area Number |
22540454
|
Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
和田 章義 気象庁気象研究所, 台風研究部, 主任研究官 (20354475)
|
Keywords | 台風 / 波浪 / 炭素系化学平衡 / 摩擦抵抗 / 海洋環境場 / 台風海洋相互作用 / 非静力学大気波浪海洋結合モデル / 海洋大循環モデル |
Research Abstract |
本研究は、観測データや非静力学大気波浪海洋結合モデルを用いて、大気海洋中に見られる様々な時空間スケール(多階層)の渦が台風海洋相互作用に果たす役割を、力学・熱力学的側面から解明し、また台風が海洋物質循環に及ぼす影響を定量的に評価することを目的とする。平成23年度は1)波浪等短期変動が台風に与える影響、2)台風通過時における突発的なCO2フラックスの変動プロセスに関する研究、3)太平洋における海洋貯熱量と台風(北西太平洋海域及びハリケーン(東太平洋)強度の関係及び海盆による違いに着目した研究を実施した。1)海面水温に関わる台風の力学過程が、順圧不安定による台風渦のメソ渦への分離及び分離したメソ渦の融合による台風渦の発達という観点から矛盾なく解釈できることを示した。2)1997年の台風TinaとWinnieの事例について、海洋大循環モデルにより、特に台風Tina通過時の海水温及びpCO2の急激な低下と海洋から大気への突発的なCO2フラックスの再現に成功した。台風通過による海洋の酸性化はこの突発的なCO2フラックス時のみ生じており、台風通過後にはPHは元の値に回復していた。3)海洋再解析データから見積もられた西太平洋の海水温26℃以上の貯熱量は東太平洋の約4倍に相当し、気象庁再解析データによる対流有効位置エネルギー(CAPE)も西太平洋と東太平洋の間で同様の関係にあった。一方、台風域でのCAPEは、東太平洋と西太平洋では平均台風強度と整合的な値であり、貯熱量やCAPEに見られたような東西差は見られなかった。また海洋再解析データの時間解像度は台風通過時の水温塩分の変動を捉えるのに重要であることが、アルゴフロートデータを用いた検証により、新たにわかった。海面粗度長の定式化が台風予測に与える影響について、上記結合モデルに5種類の定式を組み込み、感度実験を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
台風通過による海洋酸性化に関しては、数値シミュレーション結果を査読付き論文として発表し、また短期海面水温変動に対する台風予測への影響についても、技術報告として成果を残している。更に熱ポテンシャルと台風強度の関係について、北西太平洋海域における高い熱ポテンシャルと対流有効位置エネルギーは、必ずしもそのまま台風強度の強化につながらないことを発見し、中層フロートブイを用いた研究と併せて査読付き論文として投稿している。海面粗度長の定式化が台風予測に与える影響についても研究成果を口頭発表する予定であり、すでに技術報告を投稿していることから、当初の目的の大半は達成したといえる。これらに加えて大気境界層のモデル化が数値モデルで再現される台風の構造に影響を与えるという研究成果を査読付き論文として発表した。本件については、当初の計画は接地境界層にとどめていたこともあり、当初想定していなかった研究成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
海面粗度長の定式化が台風予測に与える影響について、研究成果を論文としてまとめる。この他、地球惑星科学連合国際セッション2012年連合大会の中で、本研究課題のテーマである台風海洋相互作用の国際セッションを開催する予定である。そこで本研究成果を発表し、今後の研究の推進について議論を行うことにより、最終年度の研究成果のまとめの方策を立てる。
|
Research Products
(11 results)