2010 Fiscal Year Annual Research Report
海水の光学的特性が太平洋の十年規模変動に及ぼす影響
Project/Area Number |
22540455
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
山中 吾郎 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 室長 (60442745)
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Keywords | 十年規模変動 / 亜熱帯セル / 海水の光学的特性 / 海洋大循環モデル |
Research Abstract |
新たに開発した海洋短波吸収スキーム(Ishizaki and Yamanaka, 2010 : IY10スキーム)の影響を評価するため、従来の短波吸収スキーム(Paulson and Simpson, 1977)を用いた三つのモデル(海洋大循環モデル、海洋物質循環モデル、大気海洋結合モデル)を長期積分することにより、比較のためのコントロールランを作成することを試みた。 まず、海洋大循環モデルをCOREデータ(Large and Yeager, 2009)を外力として約1500年間積分し、準平衡状態を得た。解析の結果、モデルの熱塩循環の挙動や両半球の海氷分布の再現性は概ね良好であることを確認した。従来の大気再解析データを外力とした場合には再現が難しかった、熱帯インド洋の海面水温の長期変動についても再現されていた。さらに、観測で見られる太平洋亜熱帯セル(STC)の数十年規模の変動の特徴である、1960年代から1990年代前半にかけての弱化、および1990年半ば以降の強化が再現されていることを確認した。 海洋物質循環モデルについては、海洋大循環モデルの流速・水温・塩分場を用いてオフライン計算により300年程度積分した。長期平均した大気海洋間の二酸化炭素フラックスの分布は、観測で見られる特徴を概ね示していた。 大気海洋結合モデルを、現実的な大気中二酸化炭素濃度を与えて、1851年から2005年まで積分した。熱帯域のENSOの再現性を検討した結果、ENSOの振幅は観測よりやや小さいものの、周期は観測と同程度であった。またモデルのSTCの長期変動は変動の振幅は小さいものの、観測で見られる長期的な弱化傾向や数十年規模の変動などの特徴を再現していることがわかった。 以上のことから、今年度得られたモデル結果は、観測で見られる変動の特徴を概ね再現しており、来年度以降IY10スキームの影響を評価するためのコントロールランに十分なり得ると結論できる。
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Research Products
(9 results)