2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540462
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪内 健 東京大学, 大学院・理学系研究科, 研究員 (60397601)
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Keywords | 宇宙科学 / 宇宙空間 / 宇宙線 / 超高層物理学 / 太陽圏 / 衝撃波 |
Research Abstract |
太陽風プラズマから太陽系外の星間物質への遷移領域、特に終端衝撃波面(terminationshock ; TS)において非一様・非定常な構造変動を誘発する要因を突き止めることを目的とするシミュレーションモデルを開発するにあたって、平成23年度はTS形成以前に上流太陽風中で発生している粒子の事前加速現象を担う構造要因に関するモデルの検証を進めた。前年度に引き続いて太陽風の速度二層構造から成長する相互作用領域(Corotating Interaction Region : CIR)の境界衝撃波における粒子プロセスに着目し、更に精細なハイブリッドシミュレーション結果を解析して粒子の運動効果と構造形成との相関に関する理解を深めていった。特にAlfven波がCIR内部に侵入する際に弱磁場構造(magnetic decrease)を呈する過程において、その形成メカニズムがCIR衝撃波下流の温度非等方プラズマ中に磁場擾乱が加わったときのドリフト電流による磁場強度減少効果で説明できることを突き止めた。Magnetic decrease構造は太陽風プラズマのエネルギー・空間拡散における非共鳴タイプの散乱過程への寄与も予想され、これを検証するためのシミュレーションコードの3次元化にも着手した。一方、TS領域のプラズマの主成分と考えられているピックアップイオン(中性粒子が太陽圏内で電離し、太陽風磁場の運動からローレンツ力を受ける高エネルギープラズマ)を含んだ系におけるシミュレーション結果からは、粒子を効率的に加速する衝撃波の磁場形状がエネルギーの低い背景太陽風の熱的プラズマとは異なることが示された。これは衝撃波が宇宙空間を伝播する過程でその磁場形状の変化を伴う場合、発生源の(=初期エネルギーの)異なる粒子を選択的に加速することを意味し、TS構造の非定常変動が粒子加速特性にまで及ぼす影響の大きさを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝撃波構造に大規模変動をもたらす要因として考えられる、太陽風中の電磁流体擾乱やピックアップイオンなどの成分を含んだ系をモデル化した数値シミュレーションから期待した成果(論文1件公表、1件投稿済)が着実に上がっており、最終目的である各要素の複合モデルのプログラム開発も完成に近づいている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行を通じ、また近年の世界における研究の動向を鑑みて、太陽圏境界のプラズマ環境の物理を理解する上で素過程に基づいた粒子のエネルギー獲得プロセスの重要性は増す一方であることを確信している。特に磁気リコネクションや乱流の形成が衝撃波過程に及ぼす影響は、本課題で取り扱った電磁流体擾乱や多種イオン成分に併せて今後取り込んでいかねばならない要素であり、より大規模な3次元粒子シミュレーションモデルの構築を進めていく必要がある。この状況を踏まえて、本研究課題を発展させた新たな次期研究計画の策定を始めたところである。
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