Research Abstract |
千葉県の上総層群梅ヶ瀬層には,未固結の塊状タービダイト砂層が卓越している.その特定層準には多様な未固結変形構造と脱水構造がみられる.すなわち,(1)砂の層状注入:注入砂は堆積砂層と異なり級化がみられない,(2)砂脈:上部に噴出構造は見られない,(3)砂のレンズ:泥層内部にレンズ状~不規則な形状で注入した小規模な構造で,泥層中に注入しやすい層準となる砂のラミナなどはみられない.(4)elutriation pipes:厚い砂層中に直径3~10mmほどのパイプ状に粘土分を洗い流した構造が多数形成されている,(5)泥脈:下位の泥層から上位の砂層中に泥が細脈状に注入した構造で,その上方には(4)が多い,(6)砂のブロック:下位の砂層の塊が,タービダイト砂層中に偽礫としてとり込まれている,(7)鉛直の粒子配向:砂層中の広範囲にわたって粒子長軸方位が鉛直を示す,(8)浮上した偽礫:砂層最上部に濃集し,上位の泥層に癒着するようなものもある,(9)大型ピラー構造:ロート状噴出構造とは逆に,砂層中の葉理が上方に突き破られたような変形構造.これらの変形構造のうち,(1)や(2)は地震による液状化によっても形成されると考えられているが,(5)や(7)はこれまでに知られていない.(4),(5),(7),(9)は互いに密接な関係があると考えられる.Frey et al.(2009)によると,脱水の場合は流動化した砂が対流を引き起こして砂脈に接した部分が下方に沈降してロート状噴出構造となるが,気泡が上昇すると,砂層を持ち上げてこれを突き破り大型ピラー構造を作る.この点に着目して,細粒砂層を用いて,脱水および脱ガス実験を行った結果,空気を注入すると大型ピラー構造が形成され,たが,水の上昇だけでは一時的に形成されても保存されなかった.上総層群の変形には少量の水とガスの両者が関わっている可能性が考えられる。
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