Research Abstract |
今年度は,富山県富山市三田層と新潟県新発田市~胎内市の鍬江層の地質調査および試料採取に行った.調査層準の三田層は主に細粒砂岩からなり,鍵層として有用な軽石凝灰岩層(MT1凝灰岩層)を挟む.71試料の微化石用試料と2試料の年代測定(フィッショントラック)用試料を採取した.分析の結果,調査層準の軽石凝灰岩層の年代は3.4~3.5Maであることが初めて明らかになった.この層準から貝形虫化石の抽出を行った結果,海進・海退のサイクルが認められた.また,浮遊性有孔虫化石の結果を考慮すると,この時期に,確実に暖流の流入があったことが判明した.鍬江層に関しては,平成23年度から本格的に行う殻の微量元素分析や,堆積物の元素分析用の試料が採取できるか,連続的な試料採取が可能な場所はあるかということを検討することを目的に,予察的調査を行った.また,新発田市の鍬江層と胎内市のそれとを凝灰岩層を使って対比可能かどうかの検討も行った.結果として,シルト岩からなる鍬江層の新たな連続露頭を発見することができ,そこから試料を採取し,予察的分析を行った結果,殻の分析を行うのに最適な貝形虫分類群(Krithe属)および浮遊性有孔虫化石が多産することがわかった.また,凝灰岩層についても数地点で鍵層として有効な層を発見することができ,今後,鍬江層の広域対比の可能性が高まった.さらに,新発田市の鍬江層に関しては,ほぼ時間・空間的に貝形虫化石群集の分布を解明することができ,現在,論文を準備中である.これら以外にも,鮮新-更新世の暖流系貝形虫群集を把握する必要があるため,日本の太平洋側や台湾などの地層から産する貝形虫化石群集についても解析を行った.
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