Research Abstract |
底質は生物の分布を支配する重要な環境因子であるが,有明海では泥の分布域が拡大している。また,泥粒子に吸着した有機物の分解によって,貧酸素底層水の発生源にもなる。従来の調査では,定点における採泥によって分布を推定し,かつ定点間の情報は得られないので,泥の沈殿-拡散-堆積に密接に関係する泥粒子の形態・密度など物理的特性の変化には多くの未解明な事象が存在する。 本研究では、諌早湾において,泥粒子の沈殿-移動-堆積過程における形態や物性を定量化するために,音響機器および自律型水中環境モニタリングロボット(AUV:Autonomous Under water Vihicles)の観測により,短時間に,高精度・高分解能で,かつ連続して泥の挙動の情報を収集する。あわせて,泥粒子を直接分析して浮泥形成の実態を解明する。さらに,堆積物柱状試料を採集して,粒子の配向性と底層流の流向・流速との関係を比較して,拡散パターンの要因も検討する。 平成22年度は,基礎資料となる地形,底質,水質を調査した.泥質堆積物が湾口北部の竹崎沖にある緩斜面上に堆積し,泥の単純層の厚さが斜面下部に向かって増えることから,斜面上部から下部に向かって拡散していることが明らかになった。さらに,大潮での水質の鉛直断面において,浮遊性懸濁粒子の濃度が,低塩分の沿岸水と高塩分の外海系水との境界と海底直上で極大であることが判明した。このことから,泥粒子が海底面から約30cmの部分で再移動することが予想される。ただし、AUVの不調により,流向・流速のデーターは得られていないため,再移動にかかわる流れを特定するに至っていない。
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