2010 Fiscal Year Annual Research Report
三畳紀前期ホットハウスアースの海洋環境と生物相の解析
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22540481
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
重田 康成 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30270408)
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Keywords | 三畳系 / ロシア極東 / 古環境 / 貧酸素 / 生物多様性 / 絶滅 / 回復 / 生痕化石 |
Research Abstract |
三畳紀前期の海洋環境と生物相を理解するため、ロシア・プリモーリエ州南部地域の下部三畳系の地質調査を、平成23年2月に22日間の予定で実施する予定であったが、豪雪のため延期し、平成23年5月29日~6月19日に行った。三畳系が広く分布するウスリー湾やルスキー島の沿岸部において、1/500精度でのルートマップと1/100精度での柱状図を作成し、岩相層序の観察、堆積相解析、岩石・化石試料の採集を行った。 その結果、三畳紀前期の底生生物の生息環境は、暴風時波浪限界よりも浅い環境に限られることが明らかになった。暴風時波浪限界よりも浅い内側陸棚環境下では、堆積物は底生生物の活動により撹拌作用を被っているが、陸棚環境下のものは撹拌作用も若干認められるが初成的な堆積構造を留めている。暴風時波浪限界よりも深い環境では、堆積物は黒色を示し、多量の黄鉄鉱を含み、生物による撹拌作用は一切認められない。おそらく貧酸素環境下での堆積と考えられる。同様の状況は、三畳紀前期の様々な層準の地層に認められることから、三畳紀前期を通じて、暴風時波浪限界よりも深い水域は貧酸素水塊の影響により底生生物が生息できない環境であったと言える。このような環境が、底生生物のハビタットや多様性を制限し、大量絶滅からの回復を遅らせたとも考えられる。なお、暴風時波浪限界よりも深い環境の堆積物からも、二枚貝などの底生生物の化石が産出することがあるが、これらは重力流堆積物中に限られ、すべて異地性の産状を示す。
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