2011 Fiscal Year Annual Research Report
5配位という特異な配位環境にある3価鉄の有効イオン半径の再検討と化学結合性
Project/Area Number |
22540492
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中塚 晃彦 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (80294651)
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Keywords | 5配位 / 有効イオン半径 / X線回折 / 化学結合性 / 結晶構造 |
Research Abstract |
我々の研究グループは、「Shannohにより提案された5配位Fe^<3+>の有効イオン半径が実際に観測される5配位のFe^<3+>-O距離と著しく矛盾していることが多く、その距離は配位環境(三方複錐面体配位と正芳錐面体配位)の違いによって大きく異なる」ことを発見した。本研究では、5配位のFe^<3+>をもつ種々の化合物の単結晶X線精密構造解析から、5配位Fe^<3+>の有効イオン半径の再検討と精密決定を行うとともに、5配位Fe^<3+>の配位環境とその化学結合性の関係を明らかにすることを目的とする。 平成23年度は、昨年度に良質な単結晶の合成に成功したFeVO_4の単結晶X線構造解析を行った。さらに、単結晶の合成には成功していないが、単一相と思われた粉末試料の合成に成功したPb_4Fe_3O_8Clのリートベルト解析を試みた。FeVO_4の単結晶X線回折実験の結果、この結晶は三斜晶系に属し、その格子定数はa=6.7158(6)A, b=8.0603(8)A, c=9.3567(9)A, α=96.643(8)°, β=106.638(7)°, γ=101.523(8)°と求まった。単結晶x線構造解析により得た結合距離から計算した各原子のBond valence sumは、それぞれの原子の価数と一致し、この結晶構造中には6配位のFe^<3+>と5配位のFe^<3+>が共存しているという既報の結果を確認した。FeO_6八面体とFeO_5多面体は稜共有し、両者はVO_4四面体と頂点共有した構造をとる。今回、FeVO_4における5配位Fe^<3+>-O距離[1.9486(5)A]を、既報の5配位Fe^<3+>-O距離[1.943(7)A]よりも高精度に決定できた。両者は誤差の範囲内で一致し、既報の5配位Fe^<3+>-O距離の妥当性を確認した。また、pb_4Fe_3O_8Clについては、精密な粉末X線回折測定の結果、少量ではあるが、不純物相の存在が明らかになった。その不純物相を考慮して、リートベルト解析を試みているが、現段階ではPb_4Fe_3O_8Clの構造精密化には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、X線回折装置の故障が相次ぎ、それが研究の進展に大きく影響しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
精密構造の決定に成功しているFeVO_4の零子密度解析を行い、正方錐面体配位されたFe^<3+>の化学結合性に関する知見を得る。また、現時点では成功していないが、合成条件の検討から、三方複錐面体配位されたFe^<3+>をもつ化合物(Yb_2Fe_3O_7,NaFe_3V_9O_<19>など)の単結晶合成を成功させ、それらの単結晶X線構造解析・電子密度解析を行い、上記のFeVO_4との比較から、正方錐面体配位されたFe^<3+>と三方複錐面体配位されたFe^<3+>の化学結合性の違いを検討する。それによって、5配位のFe^<3+>-O距離が配位環境によって異なる原因を明らかにする。
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