2011 Fiscal Year Annual Research Report
プレート沈み込み帯境界域における蛇紋岩化作用と交代作用
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22540494
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前川 寛和 大阪府立大学, 理学系研究科, 教授 (50173696)
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Keywords | かんらん岩 / マリアナ / 蛇紋岩化作用 / アンティゴライト |
Research Abstract |
蛇紋石鉱物には、低温で安定なクリソタイルおよびリザルダイトと高温で安定なアンティゴライトがある。かんらん岩の蛇紋岩化作用は広い温度範囲で起こるため、その主たる化学反応は、温度によって異なる可能性が考えられる。低温で安定なクリソタイルを生成する蛇紋岩化作用と、高温で安定なアンティゴライトを生成するものとは、それぞれ異なる化学反応による可能性があり、両者を区別して研究を進める必要がある。 平成23年度の研究は、マリアナ前弧全域に分布する蛇紋岩海山群を構成するかんらん岩類の記載と蛇紋岩化作用の特徴を明らかにすることに重点を置いた。その結果、(1)クリソタイルおよびリザルダイトを主とする蛇紋岩では、細粒の磁鉄鉱結晶を多量に伴うこと、(2)アンティゴライトを主とする蛇紋岩では、多量の細粒磁鉄鉱結晶を伴わないことが多く、鉄に富むかんらん石を含むことがあること、の2点が明らかになった。(2)の鉄に富むかんらん石は、組成上不均一で、その分布は流体の通路とおぼしき箇所に集中する。これまでに、陸上の蛇紋岩体の花こう岩マグマによる接触変成域において、鉄に不均質に富むかんらん石が、細粒磁鉄鉱結晶を消費して生成されるとの説が提案されているが、マリアナ前弧の蛇紋岩試料では、磁鉄鉱と鉄に富むかんらん石の関係が明瞭にわかっていない。蛇紋岩化作用は、地球上における生命の発生や沈み込み帯における地震発生に強い関わりがあると考えられており、その主要な化学反応とその多様性を正しく理解することは、地球科学や生物学において、きわめて重要である。今後、磁鉄鉱と鉄に富むかんらん石との関係を中心に、さらなる詳細な岩石学的解析を実施し、蛇紋岩化作用によって生成された鉱物の化学組成と共生関係を明らかにし、蛇紋岩化作用の本質に迫る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マリアナ前弧域での航海で採取した岩石試料の整理がほぼ終了し、データの取りまとめの段階に入っている。昨年度は大学業務が予想外に多く、十分な進捗状況にあるとはいえないが、最終年度で目標を達成するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
マリアナ前弧における個々の蛇紋岩海山のかんらん岩の記載と大枠的な鉱物の化学組成の解析が終了したので、最終年度に当たる今年度は、かんらん岩試料のうち重要なものについて、鉱物の化学組成の解析、鉱物共生の解析を、重点的に行い、マリアナ沈み込み帯における蛇紋岩化作用の特徴を明らかにし、同時にその多様性についての理解を深める。
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Research Products
(3 results)