2011 Fiscal Year Annual Research Report
高温・高圧水環境でのコロイド輸送に関する基礎的研究
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22540495
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
出口 茂 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, チームリーダー (40344296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 岳人 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究員 (50533858)
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Keywords | 鉱床形成 / 熱水鉱床 / コロイド輸送 / 超臨界水 / 分散安定性 |
Research Abstract |
昨年度までに、水の臨界点(Tc=374℃,Pc=22.1MPa)に近い高温・高圧水環境下でのコロイドの分散安定性、特に圧力と分散安定性の相関を実験的に検証することを目的に、流通型の装置を開発した(設計温度:400℃、設計圧力:94MPa)。新装置は1)高温・超高圧条件での短時間処理、2)加熱時間の影響を評価可能という特徴を有する。 単分散ポリスチレンラテックスの分散液を用いて、新装置によって高温・高圧水中での粒子の分散安定性を検討した。試料を250℃、25MPaと90MPaで処理した後、動的光散乱による粒子サイズ測定によって分散安定性を評価したところ、25MPaでは凝集したポリスチレンラテックスが、90MPaでは安定分散を保つことを強く示唆する結果を得た。従来、高温・高圧水中でのコロイドの分散安定性は、水の比誘電率によって支配されると考えられてきたが、250℃での水の比誘電率は、25MPaでは28.1、100MPaでは31.0と大きな違いは無い。比誘電率以外の要因が、高温・高圧水中でのコロイドの分散安定性を支配している可能性を示唆していると考えられる。 また本年度から新しく、超臨界水中での炭化水素の乳化プロセスに関する研究を開始した。高温・高圧の超臨界水は、様々な炭化水素と自由に相溶する。超臨界水と炭化水素の均一溶液を100℃/秒程度の速度で急冷すると、炭化水素が直径100nm以下の微細な油滴として水に分散できることを見出し、特許を出願した。高温・高圧水環境における炭化水素のコロイド輸送プロセスを考える上で、大変興味深い知見であると同時に、乳化を要する産業分野(化粧品や食品など)での応用も期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温・超高圧水中でのコロイドの分散安定性の評価については、実験手法を確立するのに手間取ったため、当初計画よりも遅れている。一方で研究開始当初には想定していなかった、超臨界水の特性を利用した乳化プロセスを見出し特許出願できた。両者を総合すると、全体として研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、様々な温度、圧力条件下でのコロイドの分散安定性を実験的に測定し、高温・超高圧水中でのコロイド分散安定性と水物性との相関を明確にする。また様々な産業分野での応用が期待される乳化技術については、実験条件の詳細化などを通して、油滴生成機構を解明することを目指すと同時に、民間企業との共同研究の可能性を探るなど、積極的なアウトリーチに努める。
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[Journal Article] Microgravity Experiments in the Field of Physical Chemistry in Japan2011
Author(s)
M.Natsuisaka, K.Tsujii, M.Shimomura, H.Yabu, Y.Hirai, T.Mashiko, S.Deguchi, S.Mukai, Y.Inoue, Y.Nishiyama, M.Sawada, K.Okumura, K.Sakamoto
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Journal Title
Journal of Physics : Conference Series
Volume: 327
Pages: 012046
DOI
Peer Reviewed
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