2011 Fiscal Year Annual Research Report
大気中でのイオン誘発核生成の定量的解明:反応素過程実験からのアプローチ
Project/Area Number |
22540498
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中井 陽一 独立行政法人理化学研究所, 櫻井RI物理研究室, 専任研究員 (30260194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50271531)
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Keywords | 地球化学 / 原子分子物理 / 微粒子核生成 / クラスターイオン / 大気エアロゾル |
Research Abstract |
イオンが誘起する大気エアロゾル形成過程の初期過程であるクラスターイオン生成の過程を研究し、大気エアロゾル形成について明らかにすることが目的である。初年度における研究結果を踏まえ、さらに測定の安定化へ向けて下記の装置改良を行った。 1.イオン移動管へのガス導入系の改良、特にガス混合系統での不純物混入の低減。 2.クラスターイオン測定部と実験パラメーターのモニター類の統括データ収集系の形成。 これらの改良はほぼ成功し、ガス混合系統での不純物混入の低減は、より良いデータを得ることを可能にしたと考えている。このように、計画していた装置改良がほぼ成功したことを受け、主に下記の実験による成果を得た。 1.ガス温度ごとにイオン移動管内の電場を変化させ、結合分子数ごとのクラスターイオンの生成量分布の電場への依存性を詳しく測定した。この電場への依存性を用いて、結合分子数が1個異なるクラスターイオン間のゼロ電場での生成比を求めた。各温度で生成されるH_3O^+イオンに水分子が結合したクラスターイオンについて、ゼロ電場での生成比を安定に測定した。 2.結合分子数が1個異なるクラスターイオン間の生成比とイオン移動管内部の水蒸気分圧から、結合分子数が1個異なるクラスターイオン間のギブスの自由エネルギー変化を、各ガス温度に対して求めることができた。この自由エネルギー変化の温度依存性は従来の実験結果と比べてもスムーズであり、システム全体の安定性が比較的良いことを示唆すると考えている。 3.室温よりも高温での測定において、H_3O^+イオンに水分子が結合したクラスターイオン以外に、H_2O^+イオンに水分子が結合したクラスターイオンも少量ながら、1個1個水分子が付着する過程で生成されていることがわかり、これらの自由エネルギー変化導出の可能性を見出した。 以上の結果を論文発表する方向で準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた装置の改良はおおむね成功し、想定していた性能向上や操作性向上を達成した。それにより、試行実験も含めて、計画していた実験をおおむね行うことができた。その結果、実績概要欄に記載したような実験成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果を受けて、H_3O^+イオンなど簡単な分子イオンに水分子が結合したクラスターイオンについての測定を継続することを中心に研究を進める予定である。とくに、クラスターイオン形成の第一段階に近いにもかかわらず従来の研究では測定値のばらつきの大きい、結合水分子数がより小さいものについて、現状よりも高温での測,定を行うことを考えている。想定している温度範囲では特に大きな困難は予想していないが、イオン移動管周辺に使用する材料の耐熱性に問題があれば、現状の材料から変更することで対応できると考えている。
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Research Products
(3 results)