2011 Fiscal Year Annual Research Report
同位体地球化学と微生物学の結合による熱水系の窒素動態解析
Project/Area Number |
22540499
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
西澤 学 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, 研究員 (60447539)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 研 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, プログラムディレクター (80359166)
|
Keywords | 熱水系 / 微生物相 / 窒素同位体 / 環境DNA |
Research Abstract |
本研究の目的は、熱水環境に生息する微生物の培養と窒素代謝の同位体分別係数の実験的決定、天然熱水に溶存する有機・無機窒素の安定同位体観測、ならびに環境DNAの解析を通して、これまで未知とされた熱水域での窒素動態を体系的に理解することにある。平成23年度の研究実施計画に則り、アンモニアに富む陸上ならびに海底の熱水域の解析をおこなった。まず陸上地下温泉について、現場の生物地球化学調査、好熱性のアンモニア酸化古細菌の集積培養、熱水に溶存する窒素化合物の同位体解析ならびに窒素代謝機能遺伝子の解析を行なった。また、平成22年度の研究実施計画で採取した沖縄トラフ海底熱水域のコア試料を用いて間隙水の窒素化合物同位体解析の一部とコア試料の16SrRNA解析を行なった。これまで好熱性のアンモニア酸化古細菌は難培養とされ、その集積培養には国内外で1例しか成功例はなかった。さらにその窒素同位体効果の報告例は皆無であった。本研究では、この好熱性のアンモニア酸化古細菌の集積培養に成功し、アンモニア酸化の同位体システマティクスについて現在解析中である。また海底下までを含めた熱水域の生物地球化学作用の観測研究はこれまで皆無であって、現在解析を進めている沖縄トラフ熱水域が初めての観測例となりつつある。成果発表に関して、陸上地下温泉の窒素動態と微生物生態について観測で得られた研究成果を国内外の学会で発表するとともに、国際学術誌に投稿した(現在、査読中)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題遂行のための基盤となる同位体分析と遺伝子解析の方法論はだいたい確立することができた。また、熱水域の調査(航海、陸上調査)と試料採取も、インド洋海底熱水域(震災の影響で当初の航海実施日程が一年半延期となった)以外の2地域については計画通り達成し、解析を進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は沖縄トラフ海底熱水域の窒素動態解析を完成させるとともに、アンモニアに乏しいマリアナ熱水域における窒素動態観測ならびに室内実験による好熱菌の硝酸還元の同位体分別係数の決定を行うことでアンモニアに乏しい熱水環境における窒素動態と微生物相の対応関係の理解を目指す。震災の影響で航海実施日程が一年半延期した(平成25年2月実施が内定)インド洋海底熱水域の窒素動態研究については、本研究課題の実施期間内では試料採取と船上での化学・生物一次解析を行い実施期間後の研究につなげる。
|