2011 Fiscal Year Annual Research Report
大電力パルススパッタ放電の特性解明と成膜用金属イオン源への展開
Project/Area Number |
22540501
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池畑 隆 茨城大学, 理工学研究科, 教授 (00159641)
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Keywords | プラズマ / スパッタリング / 薄膜形成 / グロー放電 / パルスパワー / 金属イオン / 磁場閉じ込め |
Research Abstract |
【目標】(1)円板形大電力パルススパッタの放電特性・放電形態の理解、(2)大電力パルススパッタによるCu膜の形成および微視組織の観測、(3)ホロー陰極型大電力パルススパッタ装置の製作と成膜への適用 【実施内容】(1)1インチ径Cu,Tiターゲットを用いた基礎試験によって、円板形大電力パルススパッタの電流電圧特性、プラズマ生成の挙動が概ね理解できた。特に異常グローの開始からアークに遷移する過程が高い再現性で現れ、その機構を定性的に説明できた。応用として熱電変換材料として期待されるマグネシウムシリサイド膜(Mg2Si)の成膜を試みた。Mgターゲットはアークに遷移し易く他のターゲットとは異なる挙動を示した。ひき続き原因を探求する。 (2)大電力パルススパッタによるCu成膜を行い、微視構造についてdcスパッタとの比較を行った。室温ではサブミクロンの粒径の多結晶膜で、両者の明確な違いは見られなかった。ヒーターの不良で昇温での成膜ができなかった。装置を改善の上、次年度再試する。成膜では、応用が期待されるMg2Siの成膜と特性評価に注力したい。 (3)ホロー陰極型スパッタ装置を試作して、dc及びパルスでプラズマ生成を行った。陰極内部での電子の静電閉じ込めによる放電安定化、高効率プラズマ発生を期待したが、放電が不安定になる問題があった。電極構造を再設計して改善することも考えられたが、強い磁場で電子を閉じ込める方式での放電安定化がより適切と考え、ペニング型のスパッタ源を製作した。期待通り安定な放電と強いプラズマ生成に成功した。磁場閉じ込め型では、磁力線を横切るイオン引き出しに難点が予想されるが、ここでは磁場に勾配を持たせ、ドリフトでイオンを引き出す新方式を世界ではじめて組み込んでいる。次年度はこの装置を用いて高密度金属プラズマの発生、磁場を横切るイオン引き出しの実証試験を実施する。 【成果】円板形大電力パルススパッタの電流電圧特性、放電形態の遷移、プラズマ生成の挙動が概ね理解できた。スパッタ成膜の応用として熱電変換素子として有望なMg2Si成膜の準備を整えることができた。世界初の粒子ドリフトを利用したイオン引き出しを行う、変形ペニング型スパッタ源を考案し、実証試験の準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成膜実験において、ヒーターの不良により基板の加熱ができなかった。(ただし、報告書執筆の現時点では、修理が完了しており問題は解決している。)当初計画したホロー陰極型大電力パルススパッタ源は放電が安定しない問題があった。(新に変形ペニング型スパッタ源を考案し、放電の安定化、強いプラズマの発生に成功している。世界初のスパッタイオン引き出し機構を試験する。)
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Strategy for Future Research Activity |
大電力パルススパッタの放電特性・放電形態の理解という第一の課題はほぼクリアしつつある。成膜実験については、当初のCu,Tiなどの金属膜に留まらず、新エネルギー開発研究の中で注目されるMg2Siに代表される熱電変換素子のプラズマ合成に挑む。大電力パルススパッタの新方式については、変形ペニング型スパッタ源を設計試作し、概ね安定な放電特性が得られているので、高密度金属イオン源としての当該方式の可能性を次年度追求する。
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