2010 Fiscal Year Annual Research Report
温度依存テラヘルツ分光スペクトルの第一原理計算による解釈と水素結合ネットワーク
Project/Area Number |
22550003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 まさえ 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (80183854)
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Keywords | 第一原理計算 / テラヘルツ分光法 / 水素結合 / 分散力 |
Research Abstract |
非破壊非侵襲計測手段を提供するテラヘルツ技術は、大変魅力的な研究領域になりつつある。テラヘルツ領域の振動吸収スペクトルは、分子の熱力学的特徴や構造の研究に重要な役割を果たし、その振動モードは、物理的および化学的プロセスにとって本質的なものである医学への応用を視野に入れ、テラヘルツ領域の振動スペクトルを解明しようという動きが世界的に広まっているが、まだ信頼に足る結果が得られていない。研究代表者等は、世界に先駆け、部位特異的一重鎖DNA切断因子等のテラヘルツ帯振動スペクトル測定と非経験的分子軌道理論計算による気相分子基準振動モード解析を行ってきた。しかし、気相分子の基準振動モード解析によるテラヘルツ帯振動モードの同定には限界があり、非調和性、格子振動、分散力(ファンデルワールス力)、水素結合等の問題を全て考慮した完全解明が必要である。研究代表者はベンチマーク的有機化合物について非調和性、周期性を取り込んだ第一原理理論計算と、高分解能温度依存テラヘルツ分光スペクトルのピーク形状の詳細な検討を実行し、水素結合ネットワークの形成開裂を明らかにした。平成22年度は、特に取り扱いの難しい分散力を取り込んだ理論計算の実行と水素結合に適した汎関数の検討を行い、高分解能温度依存テラヘルツ分光スペクトル測定の結果と比較検討した。その結果、分子性結晶の結晶構造は、分散力を取り込むことではじめて、1%程度の誤差で、再現でき、複雑なテラヘルツ分光スペクトルの完全解明にむけた明瞭な道筋を切り拓いた。
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