2011 Fiscal Year Annual Research Report
温度依存テラヘルツ分光スペクトルの第一原理計算による解釈と水素結合ネットワーク
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22550003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 まさえ 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80183854)
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Keywords | 第一原理計算 / テラヘルツ分光法 / 水素結合 / 分散力 |
Research Abstract |
応募者等は、世界に先駆け、部位特異的一重鎖DNA切断因子等のテラヘルツ帯振動スペクトル測定と非経験的分子軌道理論計算による気相分子基準振動モード解析を行ってきた。しかし、気相分子の基準振動モード解析によるテラヘルツ帯振動モードの同定には限界があり、非調和性、格子振動、分散力(ファンデルワールス力)、水素結合等の問題を全て考慮した完全解明が必要である。 平成24年度は、特に取り扱いの難しい分散力を取り込んだ理論計算を実行した。分散力を取り込むことによって、最適化構造は1 %以下の誤差でX線構造解析の実験データと一致し、計算した振動数は10cm-1以下の誤差で低温テラヘルツ分光スペクトルを再現した。この分散力補正した高精度大規模計算により、低温で測定した複雑なテラヘルツスペクトルのすべてのピークをあいまいさなく同定できた。更に、計算結果をもとに、テラヘルツ振動領域に観測が予測されていた弱い水素結合の伸縮振動のモードを世界で初めて明らかにした。分子間で結合する弱い水素結合の伸縮振動は分子間の並進モードとして現れる。このスペクトルの理論解析により、弱い水素結合の伸縮振動モードは、他の並進モードに比べ、強度が強いことがわかった。次に、これらの結果を踏まえ、弱い水素結合ネットワークの違いにより生じると考えられている結晶多型の振動モードの計算に応用した。弱い水素結合は、X線および中性子線を用いた構造解析データの原子間距離に基づき提唱されてきた。しかし、結合形成の直接証明には、振動モードの確認が必要であり、今後、テラヘルツ分光と第一原理計算による研究がますますその重要性を増す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質の高次構造や分子性結晶において中心的役割をし、ナノ構造判定の鍵となる弱い水素結合の伸縮振動の特徴を明らかにしたことで、テラヘルツ振動領域に検出されるナノスケールの現象解明への糸口をつくることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの弱い水素結合についての結果を踏まえ、生体関連物質等において、弱い水素結合とともに中心的役割を有する水和による水素結合ネットワークのテラヘルツ振動を明らかにする。
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Research Products
(9 results)