2011 Fiscal Year Annual Research Report
置換核酸塩基とその酸素錯体の励起状態と光線力学療法
Project/Area Number |
22550007
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 正 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30251606)
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Keywords | 核酸塩基 / 励起状態 / 酸素錯体 / 緩和過程 / 光線力学療法 |
Research Abstract |
生体高分子であるDNA/RNAを構成する核酸塩基の酸素原子または骨格炭素原子を硫黄原子または窒素原子に置換した核酸塩基は、その構造が通常核酸塩基によく似ているため細胞内に効率よく取り込まれることが知られている。しかし、その励起状態の緩和過程は通常核酸塩基の超高速内部変換とは大きく異なり、励起三重項状態への項間交差であることを明らかにしてきた。高い励起三重項量子収率をもつことによって、効率よく活性酸素種を発生させ、がん治療などの光線力学療法(PDT)への応用も検討されるようになった。これら置換核酸塩基の電子状態や励起状態の緩和・反応過程について詳細に調べることは、通常核酸塩基の励起状態緩和過程を理解するうえでも重要であると考えられる。 本研究では、過渡吸収法、時間分解熱レンズ法、近赤外分光法、光検出光音響法を用いて、置換核酸塩基の励起状態の反応性および多光子吸収スペクトルの測定を行い、励起状態の知見および酸素分子との反応性における情報を得ることを目的としている。アザ置換核酸塩基は電子励起状態によって、その緩和過程が大きく変化することを見出し、量子化学計算からも特異な緩和過程に対する知見を得た。また、UVA領域に吸収帯をもつチオ置換核酸塩基は高い項間交差量子収率をもち、溶存酸素分子による効率良く消光されるため、高濃度の活性酸素種を細胞内で発生させPDT効果を得ているものと考えられる、さらに、活性酸素とこれら核酸塩基との反応性について新たな知見を得ることができた。また、多光子励起スペクトルの測定に着手し、レーザー光照射によって長波長の光でチオ核酸塩基を励起できることを明らかにした
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
置換核酸塩基の特徴を明らかにするためには、様々な角度からの知見が必要となる。これまでの研究から特異な緩和・反応過程に関する情報が得られ、特にレーザー光を用いた長波長光による励起や活性酸素種との反応に関する知見が得られたことは重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
置換核酸塩基の緩和過程および一重項酸素の生成機構について知見を得るとともに、活性酸素との反応性について調べる。特異な緩和過程について、量子化学計算を用いた計算機実験もさらに検討する。 また、多光子吸収スペクトルを測定し、チオ核酸塩基の長波長の光での励起について調べる。
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