2011 Fiscal Year Annual Research Report
太陽光エネルギー変換を行うナノ有機分子システムの電子伝達機能
Project/Area Number |
22550009
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小堀 康博 静岡大学, 理学部, 准教授 (00282038)
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Keywords | 太陽光エネルギー変換 / 光電荷分離状態 / 立体配置 / 電子的相互作用 / 人口光合成 / 時間分解電子スピン共鳴 / オリゴシラン / フラーレン |
Research Abstract |
効率のよい光-化学エネルギー変換を行う分子素子を設計する上で、電子ドナー(D)-アクセプター(A)連結系における立体構造および電子状態がどのように電荷分離および電荷再結合過程を制御できるのかに大きな関心が持たれる。最近、オリゴシランで架橋したD-A連結系の分子内電子移動過程が観測され、長距離電子移動効率におけるSi-Si結合によるシグマ共役の役割が注目されている。当研究室では、様々な機能性分子やタンパク質の系において生成する光電荷分離状態の分子立体構造および電子的相互作用の解析を進めている。フラーレンと亜鉛ポルフィリンを様々な鎖長のオリゴシランで架橋した分子(ZnP-Si_n-C_<60>)についての光電荷分離状態の分子立体構造および電子的相互作用を決定した。オリゴシランにおけるケイ素間の結合はフレキシブルであり、様々な立体構造を持つことを明らかにした。また、直鎖状に延びた立体構造を持つオリゴシランに関しては、ケイ素間のσ結合に関与する電子軌道間の重なりによってスペーサーが共役系を持ち、この電子非局在化が電子伝達のワイヤーとしての機能をもたらすことを、時間分解EPR法によって具体的に明らかにした。さらに、ヒトタンパク質に薬物を分子認識した人工光合成分子を作成し、このタンパク質複合体において、長寿命な近距離および長距離光電荷分離状態を人工的に効率よく生成させることに世界で初めて成功した。近接している中間体分子対においては、直交した立体配置が電子雲の重なりを大きく抑制し、もとの安定な分子に戻らないようにすることによって効率よく光エネルギー変換を起こす様子が明瞭に捉えられた。さらに、タンパク質表面領域の水和分子を介した軌道の重なりが長距離電子移動過程に重要な役割を果たすことも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であったフラーレン連結分子による電子伝達機能の解析はほぼ終了した。近年では、ヒトタンパク質複合体において人工光合成機能を見いだすことにも成功し、さらに植物における光合成光化学系II反応中心や有機薄膜太陽電池における光電変換機能の解析においても大きな進展が見込めるため。
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Strategy for Future Research Activity |
薬物を分子認識した超分子型タンパク質やホウレン草から抽出した光合成光化学系II反応中心および有機薄膜太陽電池のヘテロジャンクション型ブレンド膜において、初期電荷分離状態の観測・解析により、電荷分離状態の立体構造解析を行うことによって、電子伝達機構をより具体的に明らかにしていく予定である。有機薄膜太陽電池のヘテロジャンクション型ブレンド膜においては、効率よく光電変換を行う仕組みがまだ解明されていない。今後も温度変化など様々な測定を行い初期電荷分離・電気伝導機構の詳細を明らかにしていく予定である。さらに、作成された薄膜太陽電池を用いてデバイス動作時の過渡種の観測を行い、太陽電池の分子機能について性能評価を行う予定である。
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