2011 Fiscal Year Annual Research Report
マンガンイオンを活性中心に含む金属酵素の触媒機構に関する理論的研究
Project/Area Number |
22550010
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉岡 泰規 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00291451)
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Keywords | 金属酵素 / マンガンイオン / 酸素発生複合体 / Mn/Fe2核系 / リボヌクレオチド還元酵素 / 光科学系II / B3LYP / 自然軌道解析 |
Research Abstract |
光合成系のphotosystem IIの酸素発生複合体(OEC)では、昨年度、3.5Åの解像度のX線構造であるPDBid:1S5Lを基に、反応活性中心であるCaMn_4O_4クラスターを中心にモデルを構築し、水2分子から酸素分子への4電子酸化の反応機構の解明を計画に沿って実行していた。しかし、23年度の5月に1.9Åの高解像度のX線構造が発表された。クラスター周囲に水分子が解像されるなど非常に信頼性の高い構造であると判断し研究対象を切り替えた。CaMn_4O_5クラスターを中心にモデルを再構築し、Kok cycleに示される五つの酸化状態(S_0~S_4)に対応する分子構造と電子状態をまず決定することとし、その後、各状態間の構造変化を追跡しOECの触媒(反応)機構の全解明を試みることとした。本年度は五つの酸化状態を決定したが、現在多くの議論がなされ未解決の事象に対し結論を与えることが可能となった。本年度得られた研究成果は、1)S_0状態のMnの酸化状態は、Mn_4(II,III,IV,IV)ではなくMn_4(III,III,III,IV)である。2)S_1状態において脱プロトン化される水分子は、Mnに配位する水分子であってCaに配位する水分子ではない。3)S_1とS_2状態のMnの酸化状態はそれぞれ、Mn_4(III,III,IV,IV)とMn_4(III,IV,IV,IV)であり、S_2状態まではMnが酸化される。4)S_3状態ではMnが酸化されてMn_4(IV,IV,IV,IV)へと変化するのではなく、脱プロトン化したOH陰イオンが酸化されMn-O結合が形成されO上にラジカルが出現する。Mnの酸化状態はMn_4(III,IV,IV,IV)とS_2状態から変化しない。5)Ca上の水分子が酸化反応のsubstrateであるとの提案があるが、Ca上の水分子が酸化されることはない。 これらの結果を本年1月に速報誌に発表した。これらの研究成果は未解決問題に大きなインパクトを与えるものと確信している。現在、本論文にするべくまとめている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高解像度のX線構造が発表されたこともあり、さらに、競争の激しい分野でもあることから、OECの反応機構に注力した。そのためもあってS_0からS_4状態までの分子構造を決定することができ、定性的ではあるが全反応機構が見えてきており計画よりも進んでいる。しかしその反面、リボヌクレオチド還元酵素とホスファターゼの研究は続行しているが遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
OECでは、各酸化状態間の分子構造変化(遷移機構)を明確にするのが反応機構の全解明につながるが、S_4状態は短寿命で分光学的な報告が皆無であり、実験との対比が困難である。しかし、未発表ではあるが我々はすでにS_4状態の分子構造を決定しており、S_3からS_4を経てS_0状態に至る経路を計算化学の立場から見出せるものと考えている。 来年度は、博士課程および修士課程の学生も増え、遅れ気味になっていたリボヌクレオチド還元酵素とホスファターゼの研究に注力することが可能となった。特に、ボスファターゼによるリン酸エステルの加水分解機構は完遂させる。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Possible Mechanisms of Water Splitting Reaction Based on Proton and Electron Release Pathway Revealed for CaMn_4O_5 Cluster of PSII Refined to 1.9 Å X-Ray Resolution2012
Author(s)
T.Saito, S.Yamanaka, K.Kanda, H.Isobe, Y.Takano, Y.Shigeta, Y.Umeda, K.Kawakami, J.-R.Shen, N.Kamiya, M.Okumura, M.Shoji, Y.Yoshioka, K.Yamaguchi
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Journal Title
Internat.J.Quantum.Chem.
Volume: 112
Pages: 253-276
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Development of Broken Symmetry Methods-Application to the CaMn_4O_5 Cluster at OEC of PSII Refined to 1.9 Å X-Ray Resolution2011
Author(s)
K.Kanda, S.Yamanaka, T.Saito, Y.Umena, K.Kawakami, J.R.Shen, N.Kamiya, M.Okumura, Y.Yoshioka, K.Yamaguchi
Organizer
7-th Congress of the International Society for Theoretical Chemical Physics (ISTCP-VII)
Place of Presentation
Waseda University, Tokyo, Japan
Year and Date
20110902-20110908
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