2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学的ストレステンソル密度による量子遷移の理論的研究
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22550011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立花 明知 京都大学, 工学研究科, 教授 (40135463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬波 大土 京都大学, 工学研究科, 助教 (40431770)
市川 和秀 京都大学, 工学研究科, 助教 (50401287)
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Keywords | エネルギー密度 / ストレステンソル / 化学結合 / ナノ物性 / Rigged QED |
Research Abstract |
量子電磁力学(QED)に基づいて量子遷移現象を記述して原子レベルでの物性解析を行う第一原理計算コードの開発を進めた。具体的な応用として、キラリティーが発現するメカニズムや、誘電率の周波数分散を研究目標として取り組んでいる。特に本年度はプロトタイプの計算コードを拡張し、長時間の計算を可能にする近似について多くの成果を上げた。特にハイゼンベルグ描像におけるQEDの量子状態計算が発達しなかったのはこれらの近似の発展が遅れていたためであり、我々の研究の意義は大きい。学会においてこれらの結果について発表しており、今後順次出版する。また量子遷移現象を原子レベルで理解する研究のために、ストレステンソル・ツェータカ等の新たな物性量やスピントルク・誘電率・分極率等を新たな局所密度量として再定義して解析を行っている。本年度はアルミニウムクラスター・パラジウムクラスター・グラフェン・カーボンナノチューブ・遷移金属錯体についてストレステンソルによる化学結合の根源的な様式を明らかにした。また、重力存在下での電子スピントルクについての性質を示した。また、スピン定常状態の実現がスピントルクとツェータカの釣り合いによることを遷移金属原子の系で確認した。これらの原子内では右手系と左手系の電子密度の分布に差があり、それがツェータカを生み出している。各遷移金属原子で電子密度の分布が異なるが、カイラリティ密度の分布は共通となっていることを発見した。また、局所誘電率・分極率密度の重要性を示すために、ハフニウム酸化物内の誘電特性の局所依存性を研究してきた。酸素原子周辺の誘電率はハフニウム原子周辺に比べ高い誘電率を示すことを定量的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子遷移をRiggedQED理論に基づいて計算するコード開発が順調に進み、小さい原子・分子系での物理量の時間発展の計算が可能になったため。いくつかおいた近似を取り除くことによって、より正確に理論をシミュレートすることができると考えられるが、そのための基礎となる計算方法が確立された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後取り組む事項は、現在の数値計算コードで使用している仮定や近似を改良していくことが挙げられる。原子核場を展開し原子核の生成消滅演算子を定義するための展開関数をどのようにとればよいかの研究、数値計算コードの高速化(特に2電子積分計算の高速化)、ベクトルポテンシャルの計算法、が主なものである。これにより、より大きな系への適用ならびにより長い時間のシミュレーションが可能となり、現実の系との比較が可能となると思われる。
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Research Products
(33 results)