2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550013
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石田 祐之 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70193331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 和馬 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (20385975)
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Keywords | 水素結合 / 相転移 / 単結晶X線構造解析 / 核四極共鳴 |
Research Abstract |
1.クロラニル酸-5,5'-ジメチル-2,2'-ビピリジン(1/1)とクロラニル酸-1,5-ナフチルリジン(1/1)化合物の^<14>N核四極共鳴周波数の温度変化を測定し,反強誘電相-常誘電相転移機構について調べた。いずれの化合物においても、反強誘電相ではクロラニル酸のプロトン移動に伴う非等価なN原子(N^+-H...OとN...H-O)が存在し、常誘電相ではN原子は等価(N...H...O)となることを明らかにし、これが相転移機構の重要な鍵をなっていることを示した。また、クロラニル酸-ピロリドンおよびクロラニル酸-ピペリドンの(1/1)と(1/2)結晶の調製と単結晶X線構造解析を行い、クロラニル酸-ピペリドン(1/2)結晶においてクロラニル酸のプロトンがクロラニル酸とピペリドンのO...H...O水素結合中で無秩序状態となっていることを明らかにした。これらの知見は,学術誌Phys.Chem.Chem.Phys.とActa Crystallographica Section Cにそれぞれ発表した。 2.クロロニトロ安息香酸-キノリン類系のプロトンの無秩序化を伴う短い水素結合をもつ化合物の探索を行った。キノリン系として4-メチルキノリンと6-メチルキノリンを取り上げ,種々のクロロニトロ安息香酸との単結晶試料の作成と単結晶X線構造解析を行った。その結果の一部は分子科学討論会で発表した。2-クロロ-4-ニトロ安息香酸-キノリン(1/1)および4-クロロ-2-ニトロ安息香酸-ピラジン(2/1)の結晶構造解析結果は学術誌Acta Crystallographica Section Eに発表した。さらに,クロロ安息香酸-フタラジン(1/1)化合物についても単結晶試料の調整と単結晶X線構造解析を行い、プロトンの無秩序化を伴う非常に短い水素結合を見出した。この結果はActa Crystallographica Section Cに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶X線構造解析と塩素および窒素核四極共鳴実験の測定結果が、当初の計画以上に得られており、それらの解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、クロラニル酸-モルフォリン(1/1)化合物のクロラニル酸間一次元水素結合中におけるプロトン無秩序状態について、単結晶X線構造解析と塩素核四極共鳴実験の温度変化により得られた結果を纏めて学術論文を作成中であるが、非常に短い水素結合系においては単結晶X線構造解析より求めたプロトンの占有率と、塩素核四極共鳴実験より求めた占有率では有意の差が低温領域で出てくることを見出した。 この原因の一つとしては水素結合の供与・受領原子の孤立電子対が係わっていると考えられるが、定量的な議論を行うためには単結晶X線構造解析の低温側の測定範囲を広げる必要があることが分かった。 残念ながら現有の装置では100Kまでしか測定できないため、今後60Kまで測定できる装置の導入を図り、さらに精密な解析を行う予定である。
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