2011 Fiscal Year Annual Research Report
π電子相互作用が寄与するイオン液体の会合体形成と圧力による相転移
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22550018
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高椋 利幸 佐賀大学, 工学系研究科, 准教授 (70291838)
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Keywords | 不均一混合 / π-π相互作用 / C-H-π相互作用 / 立体障害 / 球形ミセル / SANS / ATR-IR / HOESY |
Research Abstract |
平成22年度の研究によりイミダゾリウム系イオン液体C_<12>mim^+TFSA^-とベンゼンとの混合は、ベンゼンモル分率0.9≦x_<BZ>≦0.995の狭い領域において強い不均一性を示すことがわかった。両者の混合にはイミダゾリウム環とベンゼン環とのπ-πやC-H-π相互作用が影響していることを結論した。平成23年度では、ベンゼン誘導体であるトルエンおよびトリフルオロトルエンとC_nmim^+TFSA^-(n=2-12)との混合をSANS,ATR-IR,NMR,HOESY法を適用することにより観測した。その結果、トルエンとC_<12>mim^+TFSA^-との混合の不均一性は、ベンゼンほど高くないことが明らかになった。これは、トルエンメチル基がイミダゾリウム環とのπ-π相互作用に立体障害をもたらすことにより、イミダゾリウム環とトルエン分子による会合体形成を弱化することによると考察した。さらに、トルエンメチル基とイオン液体アルキル鎖との分散力も比較的均一な混合に寄与していると考えられた。 一方、SANS測定の結果はC_<12>mim^+TFSA^-とトリフルオロトルエンとの混合が均一であることを示した。HOESY法によりイオン液体アルキル鎖とトリフルオロメチル基との顕著な相互作用が認められており、このことが均一混合の原因であると考察した。震災により原研実験用原子炉JRR-3を用いたSANS実験が延期になっており、鎖長n=2-10のイオン液体とトリフルオロトルエンとの混合を観測できていない。しかし、n=2のイオン液体では非混合モル分率領域があることがわかっていることから、鎖長が短くなるほど混合の不均一性が増加することが考えられた。イオン液体アルキル鎖とトリフルオロメチル基との相互作用が弱くなることが不均一な混合をもたらしている理由であると考えた。 C_<12>mim^+NO_3^-と水との混合についてSANS測定を行ったところ、イオン液体が水中で球形ミセルを形成することを明らかにした。このミセルは、既報のCl^-やBr^-を陰イオンとしたイオン液体が形成するミセルよりも安定である。NO_3^-がイミダゾリウム環水素原子と強く相互作用するためと結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
常圧における実験は順調に進展しているが、震災の影響により原研実験用原子炉JRR-3が停止中であることからSANS実験ができていない。また、IR高圧実験については高圧セル製作が資金面から進んでない。しかし、総合して評価すればおおむね順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
原研実験用原子炉JRR-3の停止が長引くようであれば、海外の中性子散乱施設利用を考える必要がある。しかし、平成24年度は本研究の最終年度にあたり予算が少額であり、他からの渡航予算の捻出が必要である。高圧セルの製作も他資金を得て進めることを考えている。
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Research Products
(25 results)